IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
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スピードボートは快適?(後編)

熱帯モンスーンのカンボジアでは、雨季と乾季ではその自然の表情は異なる。雨季のメコン川の増水に伴い、トンレサップ川は6月ごろから、トンレサップ湖に向かい逆流を開始する。昨年、ちょうど、6月15日、メコンとトンレサップ川の合流点、プノンペンでは、丸一日、川の水の流れが止まっていた。ほぼ24時間、そして満を期したように逆流を開始した。それは、とても不思議な光景であった。

その光景は、そのままこの湖の多きさおもあらわしている。日本の琵琶湖の5倍、そして雨季の増水により、3倍の大きさになるといわれているから、雨季には琵琶湖の15倍の大きさになることになる。ほんとうに大きい。メコン川の増水時に、自然のダムの役割を果たしている。メコンからの水の逆流により、雨季と乾季で約10メートルも水位が変わるこの湖。水位の低い乾季には、浅瀬に乗り上げ、スクリューにまきついた藻を取るのに、一休みなんて事もある。

このボートの運行会社は4社。ただ、過当競争をしないようにか、四日間でローテションをくんでいる。もともと、全長30メートルほどのこのボート。マレイシアの海岸を走っていたのが、中古でカンボジアに持ち込まれ、走り始めた。しかし、現在はスピードボート乗り場の並ぶ通称日本橋の北側、川沿いの小さな造船所で造っていたりする。造船所などというと、かっこいいが、実際は道端で鉄板を切りながら、造っているという感じ。

この4社の中、一社だけ他のスピードボートより一回り大きな水中翼船タイプのものがある。社名はチャンナー、うまくこのボートに乗れた人はラッキー。所要時間も短く、快適。とうぜん、四日に一度しか運行されていない。朝7時、プノンペンからシアムリアップに昼頃着いた船は、翌日プノンペンに向かう。最近は一台では乗りきれず、2台が同時に運行されている。しかし、水中翼船の運航日でも早くチケットを手に入れないと、2台目の普通のスピードボートなんていうこともある。

そして、スピードボートの運賃US25ドル、じつはこれ外国人価格。地元のカンボジア人は5万リエルの約13ドル。最近プノンペンあたりでは21ドルまで、値段が下がってきている。しかし、シアムリアップではいぜん25ドル。種をあかすと、20ドルが船会社値段で、あとは販売しているゲストハウスなどの取り分。カンボジアに長く暮らす、クメール語もペラペラの日本人女性、同僚のカンボジア人に地元価格のチケットを買ってもらい、乗船。しかし、改札口で、ひともんちゃく。最後には、その同僚の男性の奥さんなのだ、と言いはったらしい。ただ、この料金二重制、外国人の多いプノンペン、シアムリアップ間だけ。クラッチェなど、メコンを遡上する他のルートでは、外国人も地元の人と同じ料金。

外国人からは高く取ってもいい、というのは市場の野菜もいっしょ。客に合わせて値段が変動する。市場で野菜などを売っている人たちはベトナム系のおばちゃんたちが多い。値段が変わると言えば、ここ数年のことだが、ベトナムのホーチミンのオートバイタクシー。わたしも乗る前に1ドルの約束、が降りるときには2ドル。とうぜんのように請求する。そして、まわりにいるベトナム人も同意する。なんなんだこれは、と思うがこれはホーチミンでは当たり前のことらしい。同じような被害にあった人の話をよく聞く。そのせいか、さいきん日本人にカンボジアは危なくないですか、と尋ねられる。と、この数年平和になったカンボジアの町よりは、スリやそんなたちの悪いオートバイタクシーの多いホーチミンのほうが、ワーストワンだと説明する。

スピードボートの外国人値段も、このお金を持っている外国人からは高く取ってもいい、というベトナムのなかにある論理とおなじらしい。市場のおばちゃんに聞くと、おなじカンボジア人でも、身なりのいい人には気持ち高く売るという。だから、市場にはすこしみすぼらしい服装で行ったほうが、物が安く買えることになる。

しかし、朝の市場に行くと、ほかに娯楽のないカンボジアの人たちにとっては、社交場。それなりに着飾ってくる人も多い。日本では考えられないが、単純に服装で、身分をあらわす、そんな階層社会がこの国にはまだ残っている。

いつになれば、スピードボートの外国人特別料金は廃止されるのか、それはそれで楽しみである。

更新日時 : 2000年8月 6日 16:16

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