IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

布の匂い

海洋交易の盛んな15-6世紀、沖縄はその中心地の一つであった。そこには遠くアジアの全域からものが運び込まれ、人が行き来していた。それらのなかには布だけではなく、蘇芳やラックのような染め材もふくまれていた。11月のはじめ、沖縄の南風原町で開催された「アジア絣ロードまつり」に、ウズベキスタン、インド、インドネシア、フイリッピン、タイからの織り手とともに参加した。

沖縄の地に、数百年の時間を超えて、ふたたびアジアの布が織り手とともに集まることができた。そして、沖縄の島々からやってきた元気な織り手のかたがたとの交流。おどろいたことにカンボジアの絣の代表的な柄のいくつかが、南風原の絣の中に同じように代表する柄として伝えられていること、だった。いま、カンボジアの絣の歴史を正確には知ることは出来ない。しかし、そのつながりが沖縄の地にもあったことがうかがえる。絣の道は、海の道。世界を代表する絣、といえばインド、インドネシア、カンボジア。それぞれが、海のシルクロードで結ばれていた。しかし、互いに異なる独自の美の世界を持ってきた。そして、沖縄へ伝わり日本へ。

南風原でカンボジアの絣を展示、販売させていただいた。とても盛況で、来場者の方々は、はじめてみるカンボジアの絣にとても関心を持っていただいた。そして、絣の布を手で触って感じていただけたらと思った。おもしろかったのは、沖縄の方は布を手で触れたあと、匂いをかがれる。不思議に思って、たずねてみた。触って、匂いをかぐ、自然の動作。理由は、おいしそうに感じたか、いい匂いがするのではないかと思えただった。

これは、はじめての経験であった。一人や二人ではない。ほとんどの方が、手にしたあと、匂いをかがれる。日本での展示会を各地でしながら、こられた方に布を手で触ってくださいとすすめてきた。ふつうは遠慮しながら手で触られる。触って気持ちのいい布。それが大切だと、布を作りながら思ってきたから。それは、布を頭で理解するのではなく、手や肌のような五感で感じることにつうじる。しかし、沖縄の人はおもしろい、匂いもいっしょにかがれる。沖縄の人の自然の感性の豊かさを、こんなところで見たように思えた。

更新日時 : 2000年11月30日 14:00

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