IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
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太平洋を越えてしまった森本より(2)

わたしはカンボジアの伝統織物の話と、研究所の活動の経過と現状のようなことを報告したのですが、他の報告者の多くがペーパーを見ながらの発表という感じだったのですが、ペーパーなどないわたしは、ぶっけで集まられた方々の顔を見ながらリアルな感じで話したせいか、参加者のかたから好感を持って受け入れられました。

同時にテーマごとにいくつかの会場に分かれて発表がおこなわれているのですが、わたしの会場には200人ほどの人が来てくれました。おせいじもあると思いますが、今回のシンポジュームで一番印象深い報告だった、とたくさんの人から声をかけていただきました。とくに、わたしの最近の関心事である、心、スピリット。心のこもっていない布はハンドメイドとは言わないのだ、というのが受けておりました。そして織手だけで布が出来るのではなく、その素材を作る人たち、道具を作る男たち、そんな多くの人たちの思いが一枚の布には込められているのだ、と今風のジェンダー的な立場で、織物の仕事は織手=女性の役割がという、報告があったりしたので、ぎゃくにそんな話も出してみました。

そのせいか、多くの方が、シエムリアップの研究所を訪れたいと、来年のいつごろ、なんて具体的にいってくる人もあるほど、そんな話で盛り上がっております。そして、インドで同じようなことをされている人から、アメリカインディアンの女性や南米の同じような活動を進めている人たちで、ネットワークを作ろうなんていう話まで出てきています。

それから、いややはりおられたですね。なんとなく、シンポジュームのはじめから声をかけてきた人だったのですが、そして昨日のわたしの話の後もけっこう細かいところまでカンボジアの絣の布の話をしてくる人だったのですが。今日わたしに、彼女は自分のコレクションの写真の束を見せてくれました。

カンボジアの絣、古いもの。写真だけでもたぶん約百枚、彼女はコレクションしている。そのうちの数十枚は、ほんとうにスペッシャルな、手の込んだ仕事が施されている布たちでした、もちろん、同じようなものを見かけたことが無いような布、そうはじめて見るような布も何枚か含まれていました。いや、現物を見たいなと思うのですが、予定を変更して彼女の住むアリゾナまで行くか、と思いましたが、次の機会に。いや、でもすごいですね、わたしはこんな外国でコレクションされているカンボジアの古い絣布を見るたびに、ぎゃくにカンボジアの昔の織手の人たちに頭が下がります。持ち主の彼女は、アリゾナの大学のタペストリー博物館の館長さんで、バンコックでここ十年ほどの間に手に入れたようです。勤めている博物館の布を購入する時に見かけて個人で買い始めたそうです。いやー、すごい。

そんな数百人を超す人たちで小さな町にあるホテルはどこも満員。わたしも、最初到着した空港ではアレンジしてくれていた人とうまく連絡がとれず、タクシードライバーに泊まるホテルを紹介してもらうなんていうことになりました。でも、デトロイトから乗ってきた同じ飛行機に何人かシンポジュームに参加するミュージアムのダイレクターなどというおばさま達がおり、ホテル、ホテルと叫んでいたおかげで結果的にはそんな彼女たちと話す機会ができてよかったのですが。

でもやはり、タバコが吸えない地獄です。部屋の中では、もちろん禁煙、寒い外に出てタバコを吸っておりました。普段1日二箱以上のわたくしが、1日1箱いかないのです。町の中にあるレストランなどの店ももちろんだめ。タバコ吸いは店の前にテーブルを持ち出しさみしく吸っております。でも、最初のしゃれたロッジ風の小さなホテルから、町外れのアメリカ一のホテルチェーンというベストウエスターンというモーテルかアパートかというような殺風景な国道沿いの大きな長屋風ホテルに移動(いまそこの部屋でこの文章を書いているのですが)、そこでももちろん部屋では吸えない。しかし、そのホテルのまん前に24時間営業の小さな、そう少し古い映画に良く出てくるような国道沿いの小さなドライブインかな、そこではコーヒー飲み放題チーズバーガー 5ドルで、タバコも吸い放題、やっと落ち着けるところを見つけました。そして、そこのイタ風のお兄ちゃんとなんとなく親しくなりました。

明日はもう1日この町にいて、シンポジューム参加者と日帰りツアーに出かけます。明後日、こんどはワシントンDCに移動です。とりあえず、元気な、でも時差ぼけが直らない森本です。

更新日時 : 2002年10月 7日 16:32

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