IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

マーケッティングディマンド

たまたま今日、研究所にアメリカ人のテキスタイルデザイナーの女性が訪ねてきた。彼女は自分がアメリカのマーケットのことを知っており、売れるデザインを作ることが出来るとを売り込みにきた。そして話のなかで、インドでは最近は自然染色が見直され始めてきていることを話していた。それは単純には世界の市場が自然染色による製品を望むようになってきたことに対する反映といえる。

20年前、タイで自然染色を使った織物プロジェクトを村で始めようとしたとき、相棒のタイ人のNGOスタッフは真顔で、どうして自然染色などという昔の染色でやるのだ、と聞いてきたことがあった。そして10年、タイでも自然染色が話題になり始めてきた。タイのテレビで紹介されたことも、そして、タイの国立の大学で自然染色の授業を持ったりもしていた。そして、それからまた10年。いまでは、自然染色の良さは子どもでも知っているようになってきた。

タイにある日系のタオルメーカーから、草木染めの製品を販売したいので、とわたしのところに話が転がり込んできたことがある。結論的には、それまでの化学染料を自然の草木の染め液に換へて染めたいから、染液を提供して欲しいということだった。そして、丁重にお断りした。彼らの製品カタログにはすでに、草木染めシリーズが紹介されていた、でもそれは草木染め風とでも言うのだろうか化学染料で染めたもの。それもやはり、市場の変化に対応したもの。

訪ねてきたテキスタイルデザイナー女史やインドの変化も、そしてタオルメーカーも含めたタイの流れも、そんな市場の需要の変化に反応した結果なのかもしれない。しかしここで、思うことは自然の素材を使った染色は、化学染料からただ置き換えればよいという話ではない、その材料となる植物を生み出すそんな自然への思いやりの気持ちがなければその素材を生かすことは出来ないのである。季節やそれぞれのおかれている自然環境、そして染をする現場の環境、とりわけ染色には水が大切な要素である。それも、その土地、土地の自然の一部。そこで、人の営みとしての染や織がある。

生産効率が重視され、大量に物が作られ消費されてきた時代、人々は自然環境も浪費してきたのではないだろうか。プラスチック文化。その反省が、21世紀にはいって花開き始めている。自然をいたわる、それは、そこにくらす人々もいたわる文化なのかもしれない。

下の写真は、伝統の森に出来あがったばかりの井戸のようすを確かめているところ、森の開墾、そして現場に届けられた桑の苗木。
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更新日時 : 2003年2月18日 11:23

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