IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

素材を生かす思いやり

 予定地が決まったことで、それまであたためてきたいくつもの課題や計画が、急に現実味を帯びてきた。

 カンボジアの豊かな自然が、豊かな伝統の織物を生み出した。それは、自然からの素材を使った、人々の営みとしての染めと織り。これからは「伝統の森」の現場で、その復元と活性化に取り組んでゆきたい。

 とりあえず、荒地の開墾を進めつつ、並行して現在生えている潅木の調査を行なっている。森の再生に必要な木々を残しながら植林をすすめ、生きた森を再生していく。熱帯モンスーンという風土のなかで、そこにある水や土、季節のうつろいを含めた自然環境を学び活かしながら、植物や木々を育てていく。

 自然を原材料の供給源としてただ消費するのではなく、その循環と再生を考える。それは、それを生み出す自然への思いやりの気持ちではないだろうか。その気持ちがなければ、その素材を生かすこともできない。わたしは、自然染色をしながら、そしてカンボジアの伝統織物を再現しながら「自然への思いやり」を学んできたように思う。

 伝統とは、経験と知恵。それは、何百年何千年にわたって受け継がれてきた、人々の営みである。わたしたちはそこから多くのことを学べるし、学ばなくてはならない。たとえば、単一商品作物のための大プランテーションに象徴される生産性。そこから生まれたものは、大量に作られるものであり、そして同時に大量に消費されるものであった。そして、これまでの時代は人々は自然環境をも浪費してきたのではないだろうか。プラスチックに代表されるような文化への反省が、21世紀に入り花開き始めているようだ。自然をいたわる、それは、そこに暮らす人々をもいたわる文化なのかもしれない。

更新日時 : 2003年3月 3日 10:25

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