シェムリアップの自然とともに
研究所の活動は、いつも予算と力量のジグソーパズル。そして、走りながら考える姿勢には変わりがない。
余裕があってから何かをするというのではない。必要と思えたときにそれは動き始めていく。いわば、川の流れのようなもの。メコンの支流と同様に、ときには洪水のようになり、ときには旱魃状態にもなる。それでも、時の流れのなかでなんとかバランスがとられていく。「伝統の森」計画も、そんな自然の流れのなかにあると思っている。それをすることが必要である、そのために必要なリスクを背負うことに異存はない。土地を取得するための費用も、基本は自力で、そして慈悲の心がそれを補ってくれた。
織物の村々をまわるうちに、わたしたちは偶然このシェムリアップに流れ着いたのかもしれないし、それは必然だったのかもしれない。ともあれ、この地でこの数百年のアンコール王朝を生み出してきたカンボジアの自然と人に触れることができ、人と自然のあるべき姿を学んだように思える。これからわたしたちは、「伝統の森」と呼ぶ計画を進めていく。ここで、自然によって生かされる人と、人によって活かされる自然との、営みのかたちを生み出せたらと願っている。
それは、人類がこれまでに身につけた何百年何千年の経験を、わたしたちがどこまで受け継ぐことができるのか。それを、今後のわたしたちの課題としていきたい。それは新しいジグソーパズルなのである。
更新日時 : 2003年3月 3日 10:26
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