IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
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根負け

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300人になって、もう打ち止めのはずだった、でも、またあたらしい研修生を受け入れることになってしまった。彼女は44才。旦那が新しい奥さんをもらい別れてしまって、こどもを抱えて生活できない、と。眼の前で、ぽろぽろと泣かれてしまった。下は2歳から上は15歳までの6人のこどもを抱えて、と言いながら。困ったもので、研究所はもう人はいっぱいで、また数ヶ月してから来てくれといったが、動く気配がない。根負けしてしまった、感じで。
そうして、次の日。わたしが、新しい研修生を取ったのを聞きつけたほかの研修生が、何人か自分の村から、研修生希望者をまた連れてきた。そのなかには、何人かお父さんのいない子もいる、でもいまは、とりあえず面接だけはする。でも、もちろん採れないのだけれども。貧しい、本当に生活に困っている女性を採るようにしてきたから、結果的に研究所には両親のいない子やお父さんがいない、そんな人が増えてきた。
研究所では研修生に、町の食堂で働くのと同じだけの給料を支払っている。まず彼女たちが食えることが前提だから、そして、研究所の通ってこれる。そして、技術を身につけて、自立できるように。それが研究所の現在の活動の基本である。でもほんとうに研究所の研修生候補は、数百人ではなく、数千人規模でいるのだろうか、このシエムリアップでは。
イラクの戦争が始まって、あきらかに旅行者の数が減り、研究所にこられる方の数も目に見えて減って来ている。布の売り上げで維持している、研究所にとって深刻である。数百人の研修生を抱えているのだから。そんな、ことを思うと、本当は心を鬼にして、なのだが。

更新日時 : 2003年4月 6日 11:58

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