IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
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黄色い紬糸

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黄色い生糸。繭から引き立ての糸は、黄金色といってもおかしくないほどに本当にきれいな黄色をしている。熱帯種の蚕蛾。食べている葉は日本と同じ桑の木。最近では、日本や中国の白い生糸の原種だといわれている。わたしたちも、桑の木の調査を実施、それをうらずけるものを発見している。日本や中国の生糸が機械で引き織るために改良されてきたのに比べ、自然のままの性質を保っている、野生ともいえるこの黄色い生糸はしなやかで丈夫で美しい。おなじシルクといっても、違う趣を持っている。水で洗えば洗うほど、その柔らかな風合いは美しい。
日本でも、昔、この熱帯の黄色い生糸をカンボウジュと呼んでいたことがある。それは、カンボジアからきたことをあらわしている。生糸を使った三味線の糸は黄色である、それはいまの白い生糸であれば、わざわざ染めてやる、しかし昔はこの黄色い生糸がそのまま使われていた、その名残りではないだろうか。1970年の戦乱が始まるまでのカンボジアは養蚕の盛んな国であった。ラオスの王宮では昔、いい生糸の代名詞として、クメールシルクと呼ばれていたという。最近の日本では、タイシルクが有名になってきた、でもタイの中で養蚕のもともと盛んだった所はクメールの人たちが多く暮らす、スリンやブリラム県あたりである。
研究所で、研修生の最初の仕事は、この黄色い生糸をきれいにしてやるところから始まる。手で引かれた生糸は、節くれもある、それをはずす作業が主なもの。その過程で、くず糸が出る。それをまた一本一本つないでやる。ちょうど、昔の日本の養蚕農家がいい糸は業者に納めて、残ったくず繭や糸を活かして自家用に作った生糸、それが紬糸。でも、いまの日本ではそんな手間のかかることは出来なくなってしまった。でも研究所では、研修生が生糸になれるための最初の仕事がそんなくず糸を紬ぐことから始まる。根気のいる仕事、でもこれを自然に出来るようになることで、手が生糸を覚えてゆく。織手としての最初の仕事でもある。

更新日時 : 2003年4月 9日 12:00

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