IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
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色っぽいナーガ

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わたしは京都のキモノの世界で、手描き友禅の職人さんをしながら暮らしていた。そのなかで、いい仕事をしたキモノ、それをたとえて、色っぽい、という言い方が普通だった。それは、誉め言葉。
研究所で、カンボジアの古布の復元をおばあちゃんや熟練の織手と取り組んできた。しかし、目標の古布の仕事は、そんな簡単に復元をさせてくれるほど、柔ではない。布が出来るまでの、いろんな条件や要素を復元することで、近づけるもの。そのために、括りの芭蕉の紐を作るところから、そして、最近では生糸の精練のための灰も自前で作り始めた。そして、なんといっても柄や色を決める熟練組の腕、その仕事のレベルが大切な要素。
約8年、そんな研究所の仕事もやっと、むかしの布の世界のふちにまで何とか辿り着けるようになってきた、そんな気がする。そして、ここ数ヶ月、その中でも中心にいる織手の気持ちが、傍で見ていても、すごいとわかるほどにあがっていた。気合が入っている、そんな感じだった。そんな、結果だろうか一枚のすばらしい布が出来上がってきた。残念ながら、これまで復元してきた布にストレートにそう感じることはなかった。その布を見た瞬間、色っぽい、そんな感じを無意識に感じていた。
それは、カンボジアの絣の柄の中でも代表的なナーガの柄であった。そのナーガが、そこに色っぽく横たわっている。硬さが抜けて、やさしさになって現れている。そんな仕事を、そこに見つけることができた。その布を見ながら、やっとここまで来れたか、とその時そう感じることができた。

更新日時 : 2003年6月14日 12:41

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