IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
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忘れ形見

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偶然のことで一本の刃物を手に入れた。そして、それがきっかけで2本目、3本目と、気がつけば手元に5本の似たような刃物があった。
刃物と書いたのは、これを日本刀ということにまだ少しためらいがあるから。日本刀もどきとでも言えばよいのかもしれない。研究所に来られた、服部半蔵氏の末裔にあたられるカメラマン氏、居合いの剣士、そしてその他。口をそろえて言われるのは、これは日本刀と呼べる物ではないという答え。第二次大戦の頃の軍刀かも知れないという意見も、しかしそれよりもはるかに長い時代を経てきているように思えてならない。
わたしは偶然この刀と出遭った。そして、その刃を見ながらその刀たちがたどってきた運命のようなものを感じるようになった。流れ流れて、わたしの所にやってきたこの刀たち。多くの日本の武士たちがこの東南アジアに流れてきた時代がある。東南アジアとの交易が盛んになってゆく信長の時代から、江戸のはじめ。そしてキリシタンに改宗した武士たちは、日本を離れて雇兵となってこの辺境で生きてきた。当時カンボジアにも日本人町があったという、しかしその面影も今はなく、定かではない。
この刀たちを見ながら、わたしはそんなことを思うようになった。そんな立派な、名刀といわれるものではない、下級の武士たちが携えてきた実戦の武器だったのかもしれないし、それが何代にも使い、使われながら、研がれ傷つき、身を細めて、ここまで来たのだと。わたしは、そんな勝手な思いをこの刀たちに持つようになった。それはそんな彼らの忘れ形見のようなものといえる。

更新日時 : 2003年9月24日 08:37

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