IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

棲み分け

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三日間のグランドホテル横の川沿いでおこなわれたシルクフエスティバルは無事終えた。
販売もやっていたが、そちらのほうは、あまり売れたとはいえない。
ほかのNGOやショップの布と比べれば研究所の布は手間がかかっている分、割高に感じるはずである。でもシルクのクオリティーは数段高いと自負している。それは、研究所の布に触れた時に違いとして手が感じてくれる。むかしなりの手作業で作ることをしている、それはただ単純に手でむかしなりにすることが良いという意味以上の価値を伝統の技術や知恵は持っているということに由来する。
だから、素材としての生糸もほとんどの団体や店はカンボジアシルクといいながらも主には手間の省けるベトナムからの輸入生糸を使っている。タイシルクといいながら、じつはそのほとんどの糸は中国やベトナムからの輸入生糸に頼っているのと似ている。これは、日本の伝統工芸と呼ばれる世界でも似た現象があるのだが、原材料は安い東南アジアから、場合によれば海外で作られた物を販売しているだけという伝統工芸のグローバル化?の産地もあるはずである。省力化の極といえなくもない。しかし、素材にたいする心がそれといっしょに薄れていくのではないだろうか。
単純に研究所の織機を一台動かすために最低5人の人がいる、でも一般的な中国やベトナムの機械引きの生糸で織ればその半分で足りるはずである。省力化?でも機械で繭から糸を引き、織るために改良されてきた、可哀想なクーロンお蚕さんの吐く糸なのである。最近の中国製の安いシルクの製品を使われたことがある方はご存知のはずである。水洗いに耐えられない、そんなシルクなのである。
そんな研究所の伝統的な技法を保持、復元する姿勢にたいして来場者からたくさんの賛辞を頂いた。シソワット殿下や元文化大臣などのカンボジアの方々から、それが、ほんとうにこんかいの大きな成果といえる。そしてこれまで、研究所は日本人以外の外国人に活動を積極的に紹介することをしてこなかった。なぜならば先発の名の知れたフランスのシルクファームが活動していたから、後発の研究所は一歩引いてきた。研究所の活動も、シエムリアップに来てからすでに4年、研修生の数も400人と大所帯になってきたから、だれもがその活動を見やすくわかりやすくなってきたといえる。そしてカンボジアの伝統的な絹織物にたいして、フランスのエージェンシーはシルク産業の近代化を、IKTTは伝統の掘り起こし、といふうに活動の目的が明らかに違ってきた。住みわけとでも言うものが成立してきた。その意味でもこんかいの展示会への出展の意義は大きかった。
フランスに難民として行って、フランス人と結婚、現在はカンボジアに戻ってきて暮らす女性が展示していた研究所の新作絵がすりを見ながら、彼女の子どものときに母親が見せてくれた布とおなじだといって、涙しながら喜んでくれたりした。ほんとうに光栄なことである。
4月のカンボジアの新年の催しの時に、また展示即売の機会があるようだ。

更新日時 : 2004年1月26日 09:15

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