IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
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シルク異変

研究所ではこれまで、シエムリアップから西に80キロほど行ったプノムスロックという村から生糸を買っていた。それは、村での伝統的な養蚕業を出来上がった糸を買うことで支えるという意味合いもあった。そのため、伝統の森では養蚕よりも、綿花の栽培に力を入れてきた。
ところが、そのプノムスロックから生糸が入らなくなってきた、年間約1トンほどの使用量。多くはないがそれなりの糸を使ってきた。異変はここ数ヶ月前から、まず何度か西アジアあたりのカーペット屋さんが生糸がほしいと連絡のメイルが入っていた。そしてしばらくして本人が研究所にあらわれた。
たしかに、現在の機械織りのために品種改良された中国の生糸では、土足で踏んで100年持つようなカーペットは作れない。質が落ちてきているはず、しかしカンボジアのこの黄色い生糸はそれに耐えられるだけのシルク本来の強度を持っている。彼らがこのカンボジアのシルクのよさに目をつけたのは当然かもしれない、でも、その結果、かれらは生糸を買いあさり始めた。
その余波が、研究所にも押し寄せてきた。結果、生糸がこれまでのように入らなくなってきた。
あらためて、自前の養蚕事業を考えなくてはならない時期に来たのかもしれない。そう思いつつ、在庫の生糸の量を調べた。約向こう3ヶ月はいけるがその先の糸がない。もともと4月前後は暑くて生糸の生産量は落ちるから、この間2ヶ月近く生糸のあたらしい入荷はなかったから、よけいシリアスである。
シルク異変、カンボジアの生糸が世界であらためて見直されるようになるということは予想していたが、思っていたよりも早くやってきたような気がする。結果として、新しい養蚕農家が増えていくことになれば、それはそれでいいことであるのだが。研究所の養蚕も新しいステージに入る必要がある。そんなことを、あらためて考えている。

更新日時 : 2005年06月07日 13:42

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