IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
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復帰2

[復帰からのつづき]

リナは財務担当として研究所のお金を管理し、研究所では№2の位置にいる。

そして、№1は、マネージャーとしてのビックボスのナラン。そして技術部門のソガエット。

この3人を核に約5人のマネージャクラスのスタッフがこの3人を支えている。これが現在の研究所の日常業務のメイン。

彼女たちの手で研究所は運営されている。そのことを、今回あらためて確認することができた。6年間のシエムリアップでの活動のなかで育ってきた若手たちである。

リナは仕事でよく銀行に行く、そうすると銀行員の女性が彼女にどこの大学を出たのかと訊ねてきたと笑っていた。でも彼女は小さいときに両親が離婚、母親の手で苦労をしながら育てられてきた。だから。小学校もまともに出ていない。でも能力と意欲は人一倍。研究所の日々の仕事をこなしながら、経験をつんできた。

研究所には、彼女のような女性がたくさんいる。内戦の混乱のなかで、機会が無くて学校にもいけずに来た、そんな彼女たちが研究所で新しい自分を発見し、育っていく。それも研究所の大切な役割であり、そのことで研究所の活動も育っていく。

ちょうど昨日は、イスラムの一月にわたるラマダン(断食)明け。いわばイスラムの人たちにとってはお正月に当たる。リナも厳格なイスラム教徒。研究所には、ムスリムのチャム人のスタッフもたくさんいる。彼女は、そんな研究所のチャムの人たちの中心にいる。若いがしっかりとして、いわば頭。研究所の将来にとって大切な人材のひとり。

今回彼女の治療に付き添いながら、研究所で育ったそんな一人の人間の命も救うことができないのであれば、じぶん自身が進めてきた、カンボジアでの仕事が何なのだと自問してきた。

わたしは、この十年、カンボジアでいろんな人の命とかかわってきた。そして、昨日彼女が、ふたたび職場に来ることを選んだことは、わたしにとって大切なことでもある。彼女を囲みながら、同僚の女性たちがともに彼女の復帰を喜んでいることが、見て取れる。


森本喜久男

更新日時 : 2006年10月25日 13:10

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