IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

「伝統の森」の課題

森での、生活廃水の処理とその再利用について考えながら、ふと先日亡くなられた宇井純先生のことを思いだした。

もう20年ほど前になるかもしれないが、宇井先生が講師をされていた、小さな勉強会に参加したことがある。話のなかで、非常に印象に残っているのは、下水処理場の話だった。100万都市の下水処理場を一ヶ所作る費用より、10万都市の下水処理場を10箇所作るほうが、ほんとうは安いのだというような話だた。

それは、開発の基本をどこにおくか、誰を主体に考えるのか、という問いかけだったようにも思う。わたしは、縁があっていま、カンボジアで仕事をし、シエムリアップで伝統の織物の復元とその活性化に取り組むようになった。そして伝統の織物を作り出していた村と人々を支え、包んでいた自然環境の復元とその活性化なくして、織物の復元はなし得ないという地平にたどり着いた。そして、いまその仕事に取り組み始めた。

それは、数百年、数千年の時間のなかで、人々が自然のなかでつちかい、はぐくんできた知恵を取り戻すことでもある。伝統の森計画の、英語名は「森の知恵」である。それは、そんな自然の象徴として、森があり、その森を復元、活性化すること、すなわち「生きた森」の再生が織物の復元にとって欠くことができないことだと、知ったからなのである。身にまとう布、織物は森の、自然の恵みといえる。

森の再生、森を育てるためには、当然のことながら、人がいなければ実現できないわけで、そこに暮らす人々、すなわち、森と暮らす村の再生に取り組み始めた。自然のなかで、それを生かしながら暮らす人。

人、自然、ともに生もの、旬でなければならない。はじめたわいいけれど、容易になしうることではない。この4年間の試行錯誤の上で、あらためて自覚していることがいくつかある。数百人の研究所の同僚と、いま新たな森の仕事のステージに向かっていくために、移住を開始し始めた。

人が暮らしていくために必要な要素はたくさんある。衣食住。そして、仕事。人はきれいな水を望むが、その上で人は汚れた水を排水する。しかし、それも、自然なこと。そのうえで、それとどう向き合っていくか、その課題は山済み、しかし、それも仕事。そんなことを考えながら、改めて、亡くなられた宇井純先生のことを思い出した。

更新日時 : 2006年12月20日 15:18

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