ジグソーパズル
2003年の3月に書いた文章をもう一度。
研究所の活動はいつも予算と力量のジグソーパズル。そして、走りながら考える姿勢には変わりがない。余裕があってから何かをするというのではない。必要と思えたときにそれは動き始めていく、川の流れのようなもの。メコンの支流のように、時には洪水のようになり、時には旱魃状態。それでも時の流れのなかでバランスがとられていく。
伝統の森計画もそんな自然の流れのなかにあると思っている。それをすることが必要である、そのために必要なリスクを背負うことに異存はない。土地を取得するための費用も基本は自力で、そして慈悲の心がそれを補ってくれた。
織物の村をまわりながら偶然このシエムリアップにわたしたちは流れ着いたのかもしれないし、必然だったのかもしれない。そしてこの数百年のアンコール王朝を生み出してきたカンボジアの自然と人に触れることができた。そこで人と自然のある姿を学んだように思える。
わたしたちはこれから、この地で「伝統の森」とよぶ計画を進めてゆこうとしている。それは自然によって生かされる人と、人によって活かされる自然とでもいえる営みの形を生み出せたらと願っている。そこに、人々の何百年何千年の経験をどこまで受け継ぐことができるのか、それをこれからのわたしたちの課題としてゆきたい。それはあたらしいジグソーパズルなのである。
森本喜久男
更新日時 : 2007年01月08日 11:49