しじみ

トンレサップ湖ではたくさんのシジミが採れる。
カンボジアでは、街角によくシジミ屋さんが道端に板を引いてその上で売っている。缶詰の小さな缶、一杯で500リエルが相場。研究所の研修生たちの大好物のひとつでもある。生のシジミを天日干ししただけのもの。
研究所では自然の染材で染めているが、染めたあと媒洗剤につけて色を止める。そして、その媒洗剤により、色の発色が異なる。研究所ではその媒洗剤もすべて自然のもの。廃液が環境汚染につながるカドミュームや鉛などの重金属は使わない。
灰、明礬、石灰、鉄の四種が基本。鉄は、酸化鉄いわゆる鉄漿(おはぐろ)をこれまでも自前で作ってきた。そして、ついに、石灰も自前で作るようになった。
ヤシの実で染めたあと、石灰の上澄み液に浸けると、深みのある赤みの茶色が染まる。これまでも研究所のハンカチなどの定番の色だった。これまでは町の建材屋さんで簡単に買えていた。ところが、最近質のいいものが手に入らなくなってきた。媒洗剤に使えない。
そのため、鉄漿に続いて石灰も自前で作るようになった。その原料がシジミ。藍染では、その醗酵に石灰は不可欠なもの。昔は、やはりシジミでそれをまかなっていた、そんな話をカンボジアの村の古老から聞いていた。それを、やり始めた。ところがやはり、そんな簡単ではない。7分の出来。
20年ほど前、タイの村で、おばあが、自分用のキンマという口を真っ赤にして食べるビンロウジュの実、それにはやはり石灰が不可欠で、やはり自前で作っているのを見ていた記憶がある。それは、もっと白かった。あの、口を真っ赤にしてぺっと地面に吐く、あの色はビンロウジュの石灰媒洗の色なのだ。
研究所の染組みの女性に、研究所のおばあたちから、その秘伝を聞きだすように、と話したところ、しばらくしてその謎が解けた。それは、なんと牛の糞をいっしょに燃やす、そうするともっと、白い上質の石灰が作れるらしい。牛の糞。早速、伝統の森の牛の糞の出番。
まだこれからだが、ほんとうに研究所の仕事は、昔の村と同じようなことをするようになってきた。でもそれが、新しい知恵として蘇らすことが出来れば、上出来。
森本喜久男
更新日時 : 2007年02月18日 20:01



