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IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

ゴールデン シルク

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カンボジアの生糸はほんとうに綺麗な黄色、それが日に当たるとゴールデンシルクと呼んでもおかしくないほど。

しかし、残念ながらこの綺麗な黄色は、精錬すると退色する。クリーム色、もちろんそれも素敵な生成りの色。わたしも染屋だけれども、染めた色も素敵だが、この生成りの色に勝る色はない、好きな色だ。カンボジアの伝統の色の中で、白い色が一番高位な色とされている、それはすべての色の元だから。分かるような気がする。

研究所に来られたかたが、え、カンボジアの生糸は白ではないのですか、とその美しい黄色の生糸を前にして聞かれる。この黄色い色が自然のものだとはにわかに信じがたいから。そして、何を食べてこんな綺麗な色が、「日本の蚕とおなじ桑の葉っぱです」と答えると、え、とまた驚かれる。

日本や中国の白い生糸を見慣れてきたわたしたちにとって、この黄色い生糸は驚きである。極端に品種改良が進んでしまった、日本や中国の生糸に比べて、シルク本来の良さを持っている。50年前の、結城紬や上田紬。ばしゃばしゃと洗えてしまう。洗うときは、シャンプーで、髪の毛とシルクはおなじ性質ですからと、そして、絶対にドライクリーニングには出さないでくださいと、補足する。自然の繊維は水洗いが基本。

わたしは、タイ時代からかぞえて、もう25年、この黄色い生糸に魅かれてきた。そして、その糸で出来た布と付き合ってきた。そのころは、養蚕の専門家の中でこの黄色い生糸を吐く「蚕」を見下す人たちがたくさんいた。しかし、いまでは時代も変わり、こんな自然の風合いのある、生糸が見直されるようになってきた。

さいきん研究所に、このシルクを仕事にしたいという、日本人の若い女性が訪ねてきた。研究所は、いつも、来るものは拒まず。去るものは、追わず。だから、いいですよ、と答えるのだが。彼女は、大学の農学部に在籍中。この黄色い生糸に魅せられて、休学してやってくるらしい。

わたしは、これからまだまだ、この黄色い生糸のよさは知られていくと思っている。だから、彼女がこの黄色い生糸にかかわることは、彼女の未来にとっても、いいことだと、でもいつも言うことだけれども、この仕事に自分を賭ける覚悟は必要だと、それがなければ辞めたほうがいいよと、はっきりという。それでも、彼女は引きそうにない。


森本喜久男

更新日時 : 2007年3月25日 19:43

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