IKTT
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

「水うちわをめぐる旅~長良川でつながる地域デザイン~」のご紹介

IKTTでのフィールドワークを元に卒業論文の執筆などを行った水野 馨生里さんがこの度、書籍を出版されましたので、紹介させていただきます。

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水うちわをめぐる旅―長良川でつながる地域デザイン
水野 馨生里

書籍紹介

 岐阜市の伝統工芸品であり、水のように透ける面を持ち、水に浸して仰ぐと気化熱で涼しさを増す「水うちわ」。およそ 15 年前に途絶えたこの伝統工芸品を 20 代の地域の若者と、うちわ職人が復活させる過程を追います。

 プロジェクトの道程に見えてきたものは、水うちわという工芸品の廃れた背景には、手漉き和紙の利用が減少し、日本で竹を調達することができなくなったという社会的変容の波。そして、大量生産・大量消費が前提となった社会状況の中で地域のものを誇りに思う心や、地域のすばらしさそのものを知ることがなくなってしまったという現況でした。

このような気づきは、足元が揺らぎはじめていた若者らを
地域再生の活動参加へと後押しします。

 清流である長良川の環境保全、そのために必要な里山の再生、地方の持続可能性を目指した食料&エネルギー自給率アップへの取り組みなど活動は広がりを見せています。

 水うちわをきっかけとして繰り広げられる長良川を中心とした地域デザイン。現在進行形のストーリーをお届けします。

IKTTにヒントを得て活動をはじめ、執筆に至りました 著者:水野馨生里

 私は、大学生のときにIKTTにフィールドワークにお邪魔しました。年に 1 度、3~4 回のステイは私にとって大変重要なものとなりました。ワークでは、主に、織り手への聞き取り調査や、大御所のオム・ソットへのライフヒストリー調査を行い、森本さんには多大なるアドバイスをいただいたことを覚えています。

この調査を通して私が認識したことは「IKTTの織物は、彼女らにとっての生業だ」ということでした。

生業・・・実はこの言葉は、今の私たちが行う「仕事」とはかけ離れたもののように感じます。

そう、生活のわざ、それが生業だと思うのです。

 オム・ソットにとっての織物は、「近くにあって当たり前のもの」「ないほうがおかしい」くらい自分と同一視できるものです。織物が、彼女のアイデンティティを形成している・・・そんなこと当たり前すぎて言葉にする必要のないくらい、大きな部分を占めているのです。そして彼女はまっすぐ前を見て言いました。「織物は、IKTTは誇り」だと。

 このインタビューを終えて、私は故郷の岐阜を省みたのです。なぜなら・・・私には、自分の大切なふるさとには、自分が胸をはって誇れるものがあるのだろうか・・・経済破綻など、様々な問題が浮上している地方都市で、その地域出身者が故郷を誇れないで、何が残るというのか・・・。


 このような認識を抱くきっかけをIKTTにもらい、故郷で出会ったすばらしい岐阜の伝統工芸「水うちわ」。

 私は水うちわ自体の復活だけではなくて、地域の伝統を、文化を愛する心をはぐくむこと、そして、誇るべき地域の醸成を目指しています。これも、IKTTが教えてくれたことのひとつだと思っています。

 ただ単純な、貨幣に代わる労働を提供するのではなく地の誇りになるものを創造する。古く歴史長いものだが、新たに " 創る " 。

 私はIKTTのような活動は、カンボジアだけではなく世界各国で求められうるものであると確信しています。そして、先進国で、GDP世界 2 位という地位を築きながらも迷走を続ける日本にこそ必要な活動だと思っています。

 これからもIKTTを応援させていただきたいですし、地域での活動の参考にさせていただきたいと思います。


水野馨生里

更新日時 : 2007年5月30日 10:28

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