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IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

森の木

森の木

 左の写真は 2002 年、伝統の森の建設が始まった頃のもの。そして右は、最新の 2007 年 6 月。おなじ場所で撮った写真である。

 2002 年の伝統の森の土地を取得した頃、薪になる木までも切られてしまった、現場はごらんのように荒地といえるところ、道もわずか獣道とでもいえるものだった。この写真の、道は手をいれ両側をすこし広げて、歩き易くした後の 9 月ごろのもの。

 それから、5 年。二枚の写真を、比較していただくと分かるが、木が少なくとも倍以上の大きさに育ってきている。ブッシュが、小さな林といえるようになりはじめてきた。なかには、5-6 メートルにまで成長したものも。あと 10 年もすれば、小さな森と呼べるようになるかもしれない。下草を刈り、間引きをしながら、森の木が生長してゆくのを手助けする。ほんとうに、森を育てるということを実感してきた。

 カンボジアの伝統の織物を復元する仕事に取り掛かり、今では、村の織物を支えていた自然環境、森を再生する仕事に手をつけ始めた。そして、そこに暮らす人々の村も作りながら。

 そして、桑の木を植え、カンボジアにしか残っていない伝統的な方法で蚕を飼い、黄色いシルクの糸を昔ながらの方法で作るようになった。そして、その糸を染めるための、植物が育つ森。

 伝統の森で、そんな自然の森を育てながら、カンボジアにはもっと豊かな自然染色の世界が昔からあったことを知り始めた。それは、伝統の森の村に暮らす住人が、この木は、黄色、こちらは赤色が、と東南アジアの自然染色の世界でこれまで知られてきた以上の、新しい発見ともいえる木が、伝統の森の中にあることを教えてくれた。

 それは、豊かな伝統の自然染色の植物の世界が織物とともに古くからカンボジアにあったことを物語っている。アンコール、もしくはもっと古い時代から、人々は自然の恵みとしての、染材料を森から授かって色にしていた。そんな豊かな自然を生かす経験が、カンボジアの人々の中で語り継がれてきたことを証明している。

 そんな、まだまだ手付かずの、自然染色の深みへの探求の仕事が残されている。そんなことを思いながら、あらためて、林から森になろうとしている元気な木たちに触れる時間を久しぶりに持っことができた。


森本喜久男

更新日時 : 2007年6月28日 08:25

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