技術移転、そして
技術移転、これは人材を育成するということと不可分である。
IKTT は若い研修生を育てることに、その大きな力を注いできた。でも、育てるというと、おこがましく、いっしょに仕事をしてきたといったほうが正確な気がする。ONTHE JOB TRAINING 。それも、そういう技術を持ったおばあたちを師匠にしながら。
それは織物だけではなく、養蚕や綿花からの綿紡ぎと、素材から布ができあがるまでの多岐にわたる染織の技術の集大成。伝統的に、カンボジアに伝わってきた技術である。戦争の中で中断されながらも、僅かにその技術を伝え受け継いできた人たちのお蔭である。
わたしから見れば、村のそんなおばあたちも、もちろん立派なプロフェショナル。綿花から、簡単に糸を紡いでしまえる技術、それは大変なこと。そんな技術を持った、おばあやおじいたち。そして、何よりも大切なことは、その技術を身につけることで食えるということである。だから、それはプロ。プロの仕事を学ぶことになる。
プロだから、とうぜん最高の布を作る。そのことに、IKTT の目標は一点集約される。そのために、15 歳から 70 歳まで、三世代の人たちが力をあわせる。世界で最高の絣の布、それを作り出していきたいと思っている。そのための努力や、試練はいとわない。
IKTT でアートを学ぶ、お絵かき組と呼ぶ研修生。彼女たちも、自身の美意識を磨き、よりすばらしいアート、布を生み出せる美意識を育てることに将来の目標を置く。でも、そのなかから、将来のカンボジアを代表する、女流画家が生まれてきてもいい。それも、そんな夢のひとつ。
でも基本は、売れる布。わたしは、研修生にそしておばあたちに、売れない布を作るなと言う。IKTT の布を見た方が、手にとって触ってみたいと思っていただける、その布をまとってみたいと思っていただける布を、作りきる。IKTT の仕事はその、技術と心をはぐくむこと、移転することだと思っている。
森本喜久男
更新日時 : 2007年8月10日 15:24