IKTT
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

ねずみ年

今年の5月、プノンペンの王宮へ、シハモニ国王陛下をお訪ねし、布を献上する機会に恵まれた。そして、来年1月、シハモニ国王陛下が伝統の森においでいただくことが、正式にご連絡いただいた。これは、IKTTにとってとても光栄なこと。

長い内戦のなかで失われかけていた、カンボジアの伝統の織物世界を取り戻し、再生させることめざしてきた。それは、カンボジアの人々の誇りを取り戻すことであると。そして、むかし、カンボジアの村に普通にあった、村にあるものだけで布が作れる環境の再生を目指して伝統の森計画は動き始めた。その、新しい村のあらたな出発点の日を、国王陛下がおいでいただき、迎えることが出来る。

その、準備に追われながら、来る年は、ねずみ年。わたしも60歳へ。大台に突入、人生も半ばをすぎてしまうことになる。まだ、最後の秒読みに入ったわけではないが、少しあせる気持ちがある。これからの後半戦、どこまでたどり着けるか、いまだ未知である。もう一度、気を引き締めて、初陣にでる気持ちで新年を迎える。

これまでの、シアムリアップでの活動から、伝統の森の現場に自分の活動の本拠を移していく。カンボジアでは、プノンペンでの5年間、そしてこのシエムリアップでの8年間を終え、次のステージに。

伝統の森の事業もすでに5年が経過、それは助走期間のようなもの、これからが本番、事業的には経費のみであったが、これからは伝統の森からの生産物が、プラスに転換、本来の意味での持続可能な体制を築いていけるようになりたい。

最近、その象徴のように、森で種から植えていた染色に使うベニノキの実がたくさんなり、研究所で使う以上の分が収穫でき、市場に出荷できるほどの量が採れるようになった。そして、マンゴーやジャックフルーツの実も、来年にはたくさん収穫できるはず。これは5年間の成果。

しかし生糸の生産はまだまだこれから、そして綿花。土壌改善など、まだ技術的に解決しなければならない問題が、いくつか残されている。藍の生育と、藍染はほぼ技術的にも確立できるようになってきた。一番の難題、赤い染料となる、ラックカイガラムシの成育は、まだ手付かず。課題を、来年に残している。来年の繁殖期には是非、移殖を成功させたい。そして、鮮やかな赤い色を染めてみたい。

そして、なによりもカンボジアの絣の布の世界のさらなる切磋琢磨、ほんとうに世界一の絣の布といえるような布を作れるようになりたい。しかし、それはそんなたやすいことではない。

伝統の森での仕事は、それ自体が失われた伝統の知恵を取り戻すための、人を育てる、人材育成事業であり、雇用の創出事業であった。そのなかで、自然の森を育てる環境育成事業、そして桑や綿の糸、そして藍などの染色植物を育てることと有機野菜などの農業事業、そして基幹の染と織事業に加えて、来年度から教育事業が本格的に始動する。これまでも、小さなアートスクールや識字教育、そして森に住む子どもたちのための寺小屋は運営してきた。

来年度からは、伝統の森の周辺の地域の子どもたちに開かれた、ライブラリーが併設されたアートスクールを開設していく予定でいる。そして、英語や日本語の語学教室。そして、正式に認可を受けて、「私立伝統の森学園」の設立を考えている。未来を担う子どもたちに、学ぶ環境を提供できればということが基本。それは、「森の知恵」を次の世代に伝えていくことにもつながる。

そして、これはまだ夢に属するが、伝統の森ミュージアムを作りたいと思っている。

あと数日で、2008年に。これまで、IKTTの活動を支えてきていただいたみなさんへ、あらためて感謝の気持ちをこめながら、分かち合い、これからもこの活動を温かく見守っていただけますよう、ここにお願い申し上げます。

深謝


森本喜久男

更新日時 : 2007年12月24日 18:13

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