IKTT
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

【メコンにまかせ】IKTT [クメール伝統織物研究所] Vol.110

2008/05/12___________________________________________________Vol.110 IKTT [INSTITUTE FOR KHMER TRADITIONAL TEXTILES] ______________________________________ http://iktt.esprit-libre.org/

みなさま、IKTT(クメール伝統織物研究所)の森本喜久男です。

 「伝統の森」へ、新しい家族が移住してきた。それは、タケオ州のサムラ
オンの村から来てくれたふたり。彼はもう50歳を過ぎたところ、そして奥
さん。
 最初に出会ったのは、まだはじめの調査の頃だから96年。もう13年前
になる。染めや織りだけではなく、織り機などの道具についても調べていた
頃。
 織り機のなかでいちばん大切な部分、それは筬(おさ)と呼ばれる、くし
のような形をしたもの。それによって布の風合いが決まるといっても過言で
はない。横糸を打ち込むためのその道具は、かつては竹で作られてきた。だ
が、竹の筬が金属製の筬に取って代わられて久しい。カンボジアのタケオの
ような織りの産地でも、調査当時、すでにふた家族だけが昔ながらの手仕事
で作っているだけだった。
 この10数年でさらに金属製の筬が主流になり、彼らの仕事も収入も減少
していた。そして、そのせいなのか、最近購入した竹筬にはいい出来とはい
えないものが多く、どうしたものかと考え込んでいた。
 同じタケオ出身の「伝統の森」のリーダーのひとり、トウルがお正月に村
へ帰るといったとき、できれば竹筬を作る家族を尋ねてくれるように頼んで
おいた。
 タケオに帰っていたそのトウルから電話が入った。目の前に竹筬職人の彼
がいる、シエムリアップに行ってもいいと、しかし給料は、という問い合わ
せが。大切だとはいえ、そんな大盤振る舞いをするわけにいかない。しばら
くのやり取りの後、なんとか合意点に。
 この竹筬職人は、日本では最後の方が京都におられたが、亡くなられて久
しいと聞く。後継者もなく、その技術は途絶えてしまった。最近、それを何
とか復活させようとされている方が日本におられるとも聞く。無機質ともい
える、金属の筬に比べ、手で作られた竹の筬は、ぬくもりがある。とうぜん
織られてくる布にもその違いは歴然と表われる。
 「伝統の森」には、すでに織り機などを作る男たちはいる。でも、この竹
筬だけは、純然たる職人仕事、なかなか真似てできるものではない。そんな
「伝等の森」の織りの世界に、欠けていた最後の専門家が、タケオの村から
来てくれたことになる。
 わたしからすれば、念願だったパーフェクトが達成できた、といえる。
 これを、これから森に暮らす若い男性たちに受け継がせていく、それはこ
れからの仕事である。


(1)「大村次郷ユーラシア写真図鑑」まもなく開催されます
 これまでIKTTの活動をさまざまなかたちで支援していただいている大
村次郷さんの仕事の集大成ともいえる展示会が、まもなく開催されます。
 渋谷の公園通りに面した「タバコと塩の博物館」の開館30周年記念特別
展「大村次郷ユーラシア写真図鑑 〈いっぷくの情景〉嗜好文化探訪の旅」
です。その精力的な行動力と卓越した着眼点がもたらしたもの、見えてくる
ものが、ここに集約されるのではないかと思います。展示会に併せて、講演
会なども開催される予定ですので、詳細は以下のURLでご確認ください。

□ たばこと塩の博物館 開館30周年記念特別展
□ 大村次郷ユーラシア写真図鑑 〈いっぷくの情景〉嗜好文化探訪の旅
□ 会期:2008年5月17日(土)〜7月6日(日)
□ 開館時間:10時〜18時(入館は17時30分まで)
□ 休館日: 月曜日
□ 入場料: 大人・大学生100円、小・中・高校生50円
□ 会場:たばこと塩の博物館
□ 住所:東京都渋谷区神南1−16−8(渋谷駅から徒歩10分)
□ 電話:(03)3476−2041

▼たばこと塩の博物館
http://www.jti.co.jp/Culture/museum/WelcomeJ.html


(2)「婦人公論」で『カンボジア絹絣の世界』が紹介されました。
 本日発売の雑誌「婦人公論」のブックコーナーで、『カンボジア絹絣の世
界』が紹介されました。
□ 婦人公論 2008年5月22日号(5月7日発売)
□ 定価550円(本体価格524円)

▼「婦人公論」最新号(2008年5月22日号)の表紙と目次
http://www.fujinkoron.jp/newest_issue/index.html


(3)『カンボジア絹絣の世界』発売中
 『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』が、NHKブ
ックスから発売になりました。前著『メコンにまかせ』から10年、ようや
くかたちにすることができました。多くの方たちから、続編は出さないのか
とたずねられておりましたから、これでようやく肩の荷がひとつ下ろせたよ
うな気がしております。
 早いもので、IKTTを設立してから12年になります。この『カンボジ
ア絹絣の世界』には、これまでわたしたちが取り組んできたこと、現在のI
KTTの状況、そして「伝統の森」再生計画が目指していることなどについ
て、かなりくわしく書いたつもりです。染め織りに関する描写もできるだけ
書き込みました。巻末には「IKTTの絣布ができるまで」と題し、桑の苗
を育て、養蚕をし、生糸を引き、それを括り、染め、織り上げるまでの工程
を、写真とともに簡潔に説明したページもつきました。本文中には「伝統の
森」の位置をプロットした「シエムリアップ周辺図」と、現状でいちばん詳
細な「伝統の森」の見取図も掲載されています。
 前著『メコンにまかせ』は、わたしがタイを訪れ、黄金の生糸に出会い、
そして東北タイの村びとたちと試行錯誤しながら染め織りを手がけてきたこ
とと、カンボジアユネスコのコンサルタントとして「カンボジア絹織物の現
状調査」を担当したことで、カンボジアの伝統織物が置かれた現状を知り、
その結果としてタコー村で伝統的養蚕の復活プロジェクトに取り組み、そし
てIKTTを設立するに至るまでのことが記されています。いわば、IKT
T前史とでもいえる内容でした。
 今回の『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』が出版
されたことで、IKTTは何をやっているところなのか、そして森本はこれ
から何をしようとしているのか、というみなさまの疑問に対する、ひとつの
回答とさせていただけるのではないかと思っております。
 お近くの書店でお求めになり、お読みいただければ、幸いです。
□ 書 名:『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』
□ 著 者:森本喜久男
□ 発行元:NHK出版(NHKブックス1102)
□ 価 格:970円(+税)
□ ISBN:978−4−14−091102−0 C1339


(4)リヨンでのエキシビションのご案内
 5月に、再び渡仏することになりました。今度は、パリではなくリヨンへ
向かいます。前回同様、フランスの旅行会社アジア・ボヤージが主催するギ
ャラリー「エスパスアジア」で、IKTTの絣布を中心としたエキシビジョ
ンが行なわれ、その展示準備とオープニングに立ち会うためです。
 会期は5月21日から7月15日までの8週間の予定です。リヨンは、フ
ランスのシルク生産と養蚕の地。あまり時間的余裕はありませんが、シルク
関連の施設や博物館なども訪れてみたいと思っています。皆様のお知り合い
などいらっしゃいましたら、ご案内していただければ幸いです。
□ L'ESPACE ASIA / ASIA VOYAGES
□ address: 46, rue du President Edouard Herriot, 69002 Lyon
□ phone: 0033(0) 4 78 38 30 40
□ email: lyon@asia.fr


(5)"FRONTLINE/WORLD"ウェブサイト公開のご案内
アメリカの公共テレビ局PBSの「FRONTLINE/WORLD」というドキュメンタリー
番組で私たちクメール伝統織物研究所が紹介されました。「Cambodia: The
Silk Grandmothers 」というタイトルでまとめられています(英語版の番組
ですが、わたしはインタビューに日本語で答えています)。この番組は、ウ
ェブサイト上でも公開されています(約13分)。以下のURLから、ご覧に
なれるはずです(再生にはQuicktimeあるいはRealplayerが必要とのこと)
▼「Cambodia: The Silk Grandmothers」
http://www.pbs.org/frontlineworld/rough/2007/06/cambodia_the_si.html


____________________ I N F O R M A T I O N _________________________

★★ショップ&ギャラリーの営業時間のご案内★★
シエムリアップのIKTTのショップ&ギャラリーの営業時間は朝8時から
夕方6時まで(年中無休)です。工房の見学を希望されるかたは、平日の朝
9時から夕方5時まで(正午から午後2時までは昼休み、日曜日はお休み)
の間にお越しください(できるだけ事前にご予約をお願いします)。

★★★シエムリアップ・IKTTまでの歩き方★★★
オールドマーケット(プサー・チャー)の南側にあるタ・プローム・ホテル
の玄関前に立ち、右斜め前の方向に、道路を挟んで流れるトンレサップ川に
沿って進みます。川岸には遊歩道が整備がされています。道なりに(つまり
川に沿って)歩くこと5〜6分で、右手前方に「クメール伝統織物研究所」
と日本語と英語で書かれた看板が見えてきます。ここがIKTTです。(左
側にクロコダイルファームの看板が見えたら行き過ぎてしまいました。お戻
りください)

★★★★ピアックスナエン・「伝統の森」への道のり★★★★
「伝統の森」は、シエムリアップの町から北へ約30キロ、車で約1時間の
ところにあります。アンコールワットを右に見て進み、アンコールトムの南
大門をくぐり四面仏の尊顔が微笑むバイヨン寺院を通り越し、さらに北へ。
プリアカン寺院の門前を過ぎて道路が大きく右にカーブした先に、左に折れ
る一本道が現われます。この道を約10キロ、途中何度か川を渡り、左手の
木立の間にお寺が見えたらすぐ先の道を右へ。曲がり角に設置してあるIK
TTとMORIMOTOの名前の入った緑色の看板を確認してください。こ
こから約4キロ、ふたたび川を渡り、しばらく行くと右手に「伝統の森」の
入口が現われます。シエムリアップの町から「伝統の森」まで、タクシーで
往復40〜50ドルが相場です(シエムリアップ基点で請求されるので片道
でも料金は同じです)。なお、『カンボジア絹絣の世界』p.116 にある「シ
エムリアップ周辺図」にも「伝統の森」の位置がプロットされております。
こちらも参考にしてください。

2008年5月12日
クメール伝統織物研究所 森本喜久男

●発行
IKTT (INSTITUTE FOR KHMER TRADITIONAL TEXTILES)
No. 472, Viheachen Village, Svaydongkum Commune,
(Road to lake, near the crocodile farm)
P.O. Box 9349, Siem Reap Angkor, Kingdom of Cambodia

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※このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
 を利用して発行されております。【 http://www.mag2.com/ 】
mag2 ID: 0000070073
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更新日時 : 2008年5月12日 00:07

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