IKTT
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

【メコンにまかせ】IKTT [クメール伝統織物研究所]Vol.112

2008/05/25___________________________________________________Vol.112 IKTT [INSTITUTE FOR KHMER TRADITIONAL TEXTILES] ______________________________________ http://iktt.esprit-libre.org/

みなさま、IKTT(クメール伝統織物研究所)の森本喜久男です。

 フランスの町を訪ねるといつも思うのは、石作りの町並みの美しさ。
 有名なノートルダム寺院、あれはたしかアンコールが建造された同じ時代
のもの。その細部にわたる意匠にはあらためて驚かされる。そして、町のあ
ちらこちらに残る素敵な意匠にあふれる古い寺院や建物。そのなかで、じつ
は今回リヨンで気づいたことがあった。
 それは、カンボジアの内戦前の、というよりはフランスの植民地時代の面
影の残るような、カンボジアの地方にある古い建物に共通したものが、今回
南フランスのリヨンの町の周辺の古い農家のような建物にあることに気づい
た。それは、屋根の先端に槍のような小さな塔が立っている。それと同じも
のが、あちこちに見かけられた。
 そして、木造の高床式の家の屋根の軒先につける飾りも、とてもカンボジ
ア的な意匠だと思っていたものが、じつは同じようなものがリヨンの町のあ
ちらこちらの家の窓の飾りとしてあることにも。
 わたしからみれば、とてもカンボジア的な意匠だと思っていた。
 それらのものが、地元のフランスの人たちであれば、当然のように知って
いたことなのかもしれないが、あらためて伝統や意匠が、時代とともに人や
物の交流のなかで作られていくことを知った。それは、今風に言えば異文化
交流とでもいえるのだろうか。
 リヨンは、織物の歴史やシルクの伝統のある街。偶然泊まったホテルのサ
ローンには、ふるい布の額が飾られ、なかには古い織機の道具の図版も飾ら
れていた。それが、この街の歴史を物語る、そんな街。
 まだ江戸時代、横浜の開港地にフランスの近代的な製糸機が持ち込まれ、
日本の近代養蚕業の歴史は始まった。そのきっかけを作ったのはこのリヨン
の人たちである。
 アジア・ボヤージという旅行会社の一角に設けられたギャラリーは、前回
のパリのギャラリーよりも一回り広く、わたしが持参した布を十分に飾るこ
とができた。そのオープニングにも、織物関係の人たちも来ていただき盛況
だった。
 会場準備の合間を見つけて訪ねた、織物美術館には3−5世紀のエジプト
の古布が飾られていた。そんな布をまじかで見ることができるのも、この街
ならではのことかもしれない。有名なエジプトの3世紀のとても写実的な魚
の模様の織布を見ながら、しばらく見とれて溜息をついてしまった。それは
2000年近い年月が経ったものである。でも、その色の発色は今見てもと
ても美しいのである。自分で、自然の染料で布を染めていながらも、改めて
そんな昔の人たちの仕事のすばらしさに、もういちど溜息、なのである。
 パリの一流のコレクションのスカーフを作られている方のアトリエも、お
訪ねした。今の、リヨンを代表する店。わたしが首に巻いていた、IKTT
の布から、話はひとしきり世界の生糸生産地の現状の話になった。カンボジ
アの黄色い生糸。そしてその後、ギャラリーを見に来ていただき、今年の9
月にはシエムリアップへ、というところまで話は進んでしまった。
 世界のシルク業界の最前線で活躍されているその方が、じつはギャラリー
に展示してあった布とともに、IKTTのお絵かき組の存在にいたく感心さ
れていた。そして翌日の早朝に、彼の運転する車で時速200キロ、郊外に
ある染色の工場を見に行くことになった。日頃カンボジアのでこぼこ道を時
速60キロぐらいで走っているわたしには、その近代的な染色工場を見るよ
りも軽いカルチャーショックだった。
 オープニングセレモニーを終えた後、ギャラリーのオーナーでもあるアジ
ア・ボヤ−ジの社長さんから、おまえはうちのファミリーの一部だからとい
うお言葉までいただいた。たくさんの訪問者をフランスから、おまえの「伝
統の森」の村に送るからと、笑いながら。
 昨年の5月から一年、フランスでのIKTTの活動は確実に進化すること
ができた。そんな実感を今回のリヨンでの展示会でもつことができた。これ
までの、すべての人へ感謝。


(1)リヨンでのエキシビションが始まりました
 フランスの旅行会社アジア・ボヤージが主催するギャラリー「エスパスア
ジア」での、IKTTの絣布を中心としたエキシビジョンがリヨンで始まり
ました。会期は5月21日から7月15日までの8週間です。皆様のお知り
合いなどいらっしゃいましたら、ご案内していただければ幸いです。
□ L'ESPACE ASIA / ASIA VOYAGES
□ address: 46, rue du President Edouard Herriot, 69002 Lyon
□ phone: 0033(0) 4 78 38 30 40
□ email: lyon@asia.fr


(2)「大村次郷ユーラシア写真図鑑」が始まりました
 これまでIKTTの活動をさまざまなかたちで支援していただいている大
村次郷さんの仕事の集大成ともいえる展示会が始まりました。
 渋谷の公園通りに面した「タバコと塩の博物館」の開館30周年記念特別
展「大村次郷ユーラシア写真図鑑 〈いっぷくの情景〉嗜好文化探訪の旅」
です。その精力的な行動力と卓越した着眼点がもたらしたもの、見えてくる
ものが、ここに集約されるのではないかと思います。展示会に併せて、講演
会なども開催される予定ですので、詳細は以下のURLでご確認ください。

□ たばこと塩の博物館 開館30周年記念特別展
□ 大村次郷ユーラシア写真図鑑 〈いっぷくの情景〉嗜好文化探訪の旅
□ 会期:2008年5月17日(土)〜7月6日(日)
□ 開館時間:10時〜18時(入館は17時30分まで)
□ 休館日: 月曜日
□ 入場料: 大人・大学生100円、小・中・高校生50円
□ 会場:たばこと塩の博物館
□ 住所:東京都渋谷区神南1−16−8(渋谷駅から徒歩10分)
□ 電話:(03)3476−2041

▼たばこと塩の博物館
http://www.jti.co.jp/Culture/museum/WelcomeJ.html


(3)『カンボジア絹絣の世界』発売中
 『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』が、NHKブ
ックスから発売になりました。前著『メコンにまかせ』から10年、ようや
くかたちにすることができました。多くの方たちから、続編は出さないのか
とたずねられておりましたから、これでようやく肩の荷がひとつ下ろせたよ
うな気がしております。
 早いもので、IKTTを設立してから12年になります。この『カンボジ
ア絹絣の世界』には、これまでわたしたちが取り組んできたこと、現在のI
KTTの状況、そして「伝統の森」再生計画が目指していることなどについ
て、かなりくわしく書いたつもりです。染め織りに関する描写もできるだけ
書き込みました。巻末には「IKTTの絣布ができるまで」と題し、桑の苗
を育て、養蚕をし、生糸を引き、それを括り、染め、織り上げるまでの工程
を、写真とともに簡潔に説明したページもつきました。本文中には「伝統の
森」の位置をプロットした「シエムリアップ周辺図」と、現状でいちばん詳
細な「伝統の森」の見取図も掲載されています。
 前著『メコンにまかせ』は、わたしがタイを訪れ、黄金の生糸に出会い、
そして東北タイの村びとたちと試行錯誤しながら染め織りを手がけてきたこ
とと、カンボジアユネスコのコンサルタントとして「カンボジア絹織物の現
状調査」を担当したことで、カンボジアの伝統織物が置かれた現状を知り、
その結果としてタコー村で伝統的養蚕の復活プロジェクトに取り組み、そし
てIKTTを設立するに至るまでのことが記されています。いわば、IKT
T前史とでもいえる内容でした。
 今回の『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』が出版
されたことで、IKTTは何をやっているところなのか、そして森本はこれ
から何をしようとしているのか、というみなさまの疑問に対する、ひとつの
回答とさせていただけるのではないかと思っております。
 お近くの書店でお求めになり、お読みいただければ、幸いです。
□ 書 名:『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』
□ 著 者:森本喜久男
□ 発行元:NHK出版(NHKブックス1102)
□ 価 格:970円(+税)
□ ISBN:978−4−14−091102−0 C1339


(4)"FRONTLINE/WORLD"ウェブサイト公開のご案内
アメリカの公共テレビ局PBSの「FRONTLINE/WORLD」というドキュメンタリー
番組で私たちクメール伝統織物研究所が紹介されました。「Cambodia: The
Silk Grandmothers 」というタイトルでまとめられています(英語版の番組
ですが、わたしはインタビューに日本語で答えています)。この番組は、ウ
ェブサイト上でも公開されています(約13分)。以下のURLから、ご覧に
なれるはずです(再生にはQuicktimeあるいはRealplayerが必要とのこと)
▼「Cambodia: The Silk Grandmothers」
http://www.pbs.org/frontlineworld/rough/2007/06/cambodia_the_si.html


____________________ I N F O R M A T I O N _________________________

★★ショップ&ギャラリーの営業時間のご案内★★
シエムリアップのIKTTのショップ&ギャラリーの営業時間は朝8時から
夕方6時まで(年中無休)です。工房の見学を希望されるかたは、平日の朝
9時から夕方5時まで(正午から午後2時までは昼休み、日曜日はお休み)
の間にお越しください(できるだけ事前にご予約をお願いします)。

★★★シエムリアップ・IKTTまでの歩き方★★★
オールドマーケット(プサー・チャー)の南側にあるタ・プローム・ホテル
の玄関前に立ち、右斜め前の方向に、道路を挟んで流れるトンレサップ川に
沿って進みます。川岸には遊歩道が整備がされています。道なりに(つまり
川に沿って)歩くこと5〜6分で、右手前方に「クメール伝統織物研究所」
と日本語と英語で書かれた看板が見えてきます。ここがIKTTです。(左
側にクロコダイルファームの看板が見えたら行き過ぎてしまいました。お戻
りください)

★★★★ピアックスナエン・「伝統の森」への道のり★★★★
「伝統の森」は、シエムリアップの町から北へ約30キロ、車で約1時間の
ところにあります。アンコールワットを右に見て進み、アンコールトムの南
大門をくぐり四面仏の尊顔が微笑むバイヨン寺院を通り越し、さらに北へ。
プリアカン寺院の門前を過ぎて道路が大きく右にカーブした先に、左に折れ
る一本道が現われます。この道を約10キロ、途中何度か川を渡り、左手の
木立の間にお寺が見えたらすぐ先の道を右へ。曲がり角に設置してあるIK
TTとMORIMOTOの名前の入った緑色の看板を確認してください。こ
こから約4キロ、ふたたび川を渡り、しばらく行くと右手に「伝統の森」の
入口が現われます。シエムリアップの町から「伝統の森」まで、タクシーで
往復40〜50ドルが相場です(シエムリアップ基点で請求されるので片道
でも料金は同じです)。なお、『カンボジア絹絣の世界』p.116 にある「シ
エムリアップ周辺図」にも「伝統の森」の位置がプロットされております。
こちらも参考にしてください。

2008年5月25日
クメール伝統織物研究所 森本喜久男

●発行
IKTT (INSTITUTE FOR KHMER TRADITIONAL TEXTILES)
No. 472, Viheachen Village, Svaydongkum Commune,
(Road to lake, near the crocodile farm)
P.O. Box 9349, Siem Reap Angkor, Kingdom of Cambodia

※当メールに掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。
※このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
 を利用して発行されております。【 http://www.mag2.com/ 】
mag2 ID: 0000070073
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更新日時 : 2008年5月25日 23:16

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