IKTT
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

パーフェクト

パーフェクト伝統の森へ、新しい家族が移住してきた。それは、タケオ州のサムラオンの村から来てくれたふたり。

彼はもう50歳を過ぎたところ、そして奥さん。最初に出会ったのはまだはじめの調査の頃、96年。もう13年前になる。染や織だけではなく、織気などの道具についても調べていた頃。

織機の中で一番大切な部分、それは筬(おさ)と呼ばれる、くしのような形をしたもの、そして竹で作られてきた。横糸を打ち込む、その道具は、それによって布の風合いが決まる、といっても過言ではない。そんな、竹の筬が金属製の筬に取って代わられカンボジアのタケオのような織の産地でも当時の調査時、ふた家族だけが昔ながらの手仕事で作っていた。しかし、この10数年でさらに金属製筬が主流になり、彼らの仕事も収入も減少していた。そして、そのせいか、最近購入した竹筬はいい出来とはいえないものが多く、考え込んでいた。

そして、同じタケオ出身の伝統の森の織手のリーダーのひとり、トウルが村に、お正月帰るといったとき、できれば竹筬を作る家族を尋ねてくれるように頼んでいた。

タケオに帰っていたトウルから電話が、目の前に竹筬職人の彼がいた、シエムリアップに行ってもいいと、しかし給料は、という問い合わせが。大切だとはいえ、そんな大盤振る舞いをするわけにいかない。しばらくのやり取りの後、なんとか合意点に。

この竹筬職人は、日本では最後の方が京都におられたが、亡くなられて久しいと聞く。後継者もなく、その技術は途絶えてしまった。それを、何とか復活させようとされている方が、最近日本におられるとも聞く。無機質ともいえる、金属筬に比べ、手で作られた竹の筬は、ぬくもりがある。とうぜん織られてくる、布にもその違いは歴然とある。

伝統の森には、すでに織機などを作る男たちはいる、でもこの竹筬だけは、純然たる職人仕事、なかなか真似てできるものではない。そんな、伝等の森の織の世界、その欠けていた最後の専門家がタケオの村から来てくれたことになる。

念願のパァーフエクトが達成できた、といえる。これを、これから森に暮らす若い男性たちに受け継がせていく、それはこれからの仕事。

更新日時 : 2008年5月12日 07:20

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