テキスタイルミュージアム
IKTTには、カンボジアの古布のコレクションがある。それは、この10数年間で少しずつ集めてきたもの。その多くは、94-97年ごろに集めたもの。魂のこもった布たちである。そして、それらは、そんな布など見たことのないIKTTの若い研修生たちのテキストであり、先生である。
なかには、朝市の市場で野菜と並んで売られていたものもある。でも、実はその布は、間違いなく王家の人たちしかまとうことがなかったであろう本当の銀糸のずっしりと重い布。
プノンペンのアンティックショップで雑巾代わりに使われていた、継ぎあてされた絣の古い布の切れ端。当時、店の人にすれば、そんな布の端切れなど、商品価値があるとは思えないものだった。尋ねたら、欲しければもっていけ、とただで店主から譲っていただいた。そして、家で黒ずんだその雑巾もどきを洗い、現れてきた柄を見て驚いた。すばらしい仕事がされたもの。いまでは、IKTTの復元作業の中での定番。ショップで人気の布である。
先日、伝統の森に来客があり、それらを棚から出し、お見せする機会があった。なかには、本当に溜息が出るような仕事がされたものも。それは、100年前のカンボジアの織り手たちの誇りといえる。わたしたちIKTTでは、まだそれらのすばらしい布の世界を復元できる技量はない。
進化ではなく退化したわたしたちが、その足元に及ぶためには、更なる研鑽が必要であり、それらが持っていたであろう豊かな自然環境を取り戻すこと以外に、それにもう一歩近づくことは難しい。
そんなカンボジアの布の世界を、常設で展示するスペースを持つことができればと思っている。そして、カンボジアの黄色い生糸を吐く蚕の世界。そして、わたしがスーパーナチュラルと呼ぶ、カンボジアに伝わってきた、もしくはこのアジアの熱帯モンスーンの自然環境のなかで数百年、数千年にわたり培われてきた、染色の知恵。それらを展示することができるミュージアムを構想し始めた。
それは、まだこれからのこと。新たな仕事になる。
しかし、来客を迎えながら、それも具体的に動き始める時期がきていることを感じ始めている。もちろん、建物を建てるための予算のめどはまったくない。あるのは、予定地だけ。
でもそこには、すでに夢が広がり始めている。
更新日時 : 2008年6月25日 13:37


