IKTT
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

お絵描組予備軍

お絵描き組予備軍2002年5月にスタートした、シエムリアップのお絵描き組。早いもので、もう6年目にはいる。

6年といえば、日本の美術大学なら学部から修士にあたる。カンボジアでは学校での美術教育などまだないから、彼女たちはIKTTに来て初めて、水彩絵の具や筆を手にした。しかし、いまでは、模写からそれぞれの個性が出てくるところまで進んでいる。

これまで、彼女たちの描いた絵はファイルにすべて保存してきた。それは、自分で足跡を確かめられるように。そして、彼女たちの絵を見た方から譲って欲しいといわれることも。でも、それはお断りしてきた。

初めのころは、絵の具などの画材もシェムリアップでは手に入らなかったから、わたしが日本やタイに行ったときに買い込んで持ってきていた。最近では、絵の具をお土産で届けていただく方も出てきた。うれしいのは、日本の学校でいらなくなった使いさしの絵の具を届けていただく美術の先生も。

筆も最初はわたしが使っていたものを渡した。手描き友禅時代からの、彩色筆や面相筆も、そんないいものを使い慣れてしまった彼女たちは、時に、わたしが日本に行くときに、これを買ってきて欲しいと、短くなった面相筆を差し出す。弘法も筆を選ばず、というものの、やはりいい道具はいい仕事をしてくれる。そんな、ことも理解し始めた。

仕事として、朝8時から夕方5時まで。絵を描き続けるためには大変な集中力を要求される。給料を貰いながら絵が描けるのだから幸せなようだが、それはそれで大変なこと。

目的は美意識を磨くこと。物を見る眼、表現する技術、それを模写を基本にしながら培う。伝統を守るものとしてとらえるのではなく、あらたな伝統を創造していくこととして、そのための優れた美意識を持った人材を育てていくことを目的にしてきた。そして、画材の紙も桑の木から、手漉きで自作。

そのお絵描き組のリーダー格のマリーが、4月から伝統の森に住み始めた。それをきっかけに、彼女を先生に、森にあたらしいお絵描き組ができた。といっても、そのほとんどは半日は学校に通っている10歳から14歳。半日だけのお絵描き組。だから、それはお絵描き組予備軍。

今年の初めから、好きなときに来て本を読んだり絵を描く、オープンのライブラリーを森に開設した。そんな環境を、森の子どもたちに提供したいと考えてのこと。そのなかから、絵を描くのが好きな子どもたち8人ほどが、お絵描き組予備軍に昇格。でも、なかなか、集中力を維持することは大変なこと。おしゃべりや、ふざけたくなったら外に、そして、絵を描きたくなったら戻ってきなさいといわれる。

シェムリアップのお絵描き組の中には、将来カンボジアを代表するような女流画家になってもいいような人もいる。彼女たち、そして、新しい予備軍になった子どもたち。人生のある時期に、そんな時間を持てたことが、いろんなかたちで生かされるようになると思う。それは、物を見る眼や集中力、そして何よりもすばらしい美意識。

そして、そのなかから本当に新しい伝統を生み出すことができるようになれば、素晴らしいこと。

更新日時 : 2008年7月15日 10:13

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