IKTT
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

【メコンにまかせ】IKTT [クメール伝統織物研究所]Vol.122

2008/08/18___________________________________________________Vol.122 IKTT [INSTITUTE FOR KHMER TRADITIONAL TEXTILES] ______________________________________ http://iktt.esprit-libre.org/

みなさま、IKTT(クメール伝統織物研究所)の森本喜久男です。
 夏休みに入り、日本からのたくさんの訪問者に恵まれています。『カンボ
ジア絹絣の世界』を読んできました、とおしゃっていただく方にもお会いし
ました。昨年に続き、また来ました、という方もいらっしゃいます。ありが
とうございます。

◎「伝統の森」が島に?
 ここ数日、雨が多い。スコールというにはかなり長時間、どしゃぶりの雨
が降る。おとといの晩も、20時過ぎから夜半まで降り続いた。降雨量はか
なりのもの。「伝統の森」の沼の水位が上がってきた。
 この水位の上昇、どしゃぶりのせいだけでなく、じつは3日前、沼からア
ンコール時代の水門跡へと続く、流れをせき止めたことにも起因する。シド
ニー大学が中心になって進めているGAP(グレートアンコールプロジェク
ト)からの進言により、水門跡が流水にさらされると遺跡が劣化するとのこ
とで、遺跡に流れ込む水流を埋め立てることになったのだ。
 じつはこの水門跡へと落ちる水流も、2003年の雨季に増水した沼の水
が、より低い部分を求めて、自分で流れ落ちた結果、できあがった水流だっ
た。この流れを跨ぐために、森の男衆たちと橋を作ったのだが、今回のせき
止め工事の結果、この橋もつき崩したかっこうとなった。それはともあれ、
沼に流れ込んだ水が逃げるところを改めて作ってやらないと、「伝統の森」
の工芸村周辺が水没することになりかねない。
 朝起きるなり周囲を見てまわった。沼の対岸の野菜畑へと渡る橋も水没、
森の入口から工芸村へと続く道も、一部が十数センチの冠水。工芸村エリア
が、水に囲まれたかっこうになった。もともと、このエリアはシエムリアッ
プ川の中州にできた島のようなところ。それが、もとのかたちに戻っただけ
なのだが。
 1960年代に作られた5万分の1の地図を見ると、この工芸村のあたり
は、雨季に増水する川の蛇行によってできた複雑なかたちの沼地になってい
た。その状況が、大雨で再現されたようなものかもしれない。
 これ以上、水かさが増えると工芸村が水没の危機にさらされる。そこで、
シエムリアップ川へと導水路を掘ることにした。朝いちばん、若い男衆たち
を集めた。村長のトオルと、現場を確認する。昨夜、考えていたとおり、第
3エリアにある自然林育成地域でいちばん低いところから、桑畑を横切り、
藍畑の横をかすめて、地形を利用しての、シエムリアップ川へと溝を掘る土
木工事を決めた。
 長野の有志のみなさんから寄贈されたエスカベーターで溝を堀り、十数人
の男衆たちが残土をかき出す。約3時間半の作業で、幅50センチ、深さ1
メートル以上、長さ50メートルの導水路が出来上がった。
 これで、ひと安心。冠水した水がすべて引くほど深くは掘れなかったが、
いま以上に増水する危険もなくなるはず。導水路のメンテは週に一回は男衆
たちで行うことを決めた。沼を渡る橋をもう少し高いところに作り直し、冠
水した道路には、順次、石を撒き、盛り土をしていく。
 水を制する者、国(?)を制する、の朝だった。

◎地鎮祭
 8月13日、長野県飯田市のNPO法人「ふるさと南信州緑の基金」のみ
なさんが「伝統の森」にやってきた。2月のスタディツアーに続き、今年は
2度目の「伝統の森」訪問である。
 今回の目的は、「伝統の森学園」設立の第一歩として、子どもたちのため
の学校建設にあたり、地鎮祭を行うこと。長年にわたる緑の基金のみなさん
の支援活動が飯田市の牧野光朗市長の知るところとなり、IKTTと緑の基
金の活動趣旨に賛同された牧野市長からのお祝いのメッセージを携えての地
鎮祭となった。
 開墾した校舎建設予定地にしめなわを張り、米、塩、酒、野菜などの供物
を準備、略式ながらお祓いを済ませ、くわ入れの儀、ふるさと南信州緑の基
金の伊澤先生による牧野市長のメッセージ代読を経て、地鎮祭は無事終了し
ました。飯田市のみなさんのこれまでの支援協力に感謝し、この校舎は「飯
田学校」と銘々することとしました。募金にご協力いただいた飯田市のみな
さん、ふるさと南信州緑の基金のみなさん、そして牧野光朗市長、ありがと
うございました。
 みなさま、「伝統の森学園」の成長を、これからもあたたかく見守ってい
ってください。
 地鎮祭に先立っては、緑の基金からIKTTへの贈呈式も行なわれ、飯田
市での募金活動で集められた学校建設資金の一部、新たな牛の購入資金、蚊
帳、古紙(裏紙)で作ったお絵かき帳、手作りメモ帳、タオル、運動着など
が、IKTTスタッフたちに手渡されました。
 この飯田学校は、今後、本格的な整地作業を経て、来年2月の竣工をめざ
し建設工事に入る予定です。


(1)「伝統の森」にショップがオープンしました
 新たに、「伝統の森」に、ショップがオープンしました(シエムリアップ
のショップ&ギャラリーが移転したわけではないので「伝統の森」にまで足
をのばす時間のない方は、これまでどおりシェムリアップのショップへお越
しください)。
 森のショップの営業時間は朝7時から夕方4時までです。お越しになる場
合は、できるだけ事前にご連絡をお願いいたします。
 なお、「伝統の森」では農作業が中心となるため、全体の作業開始が朝7
時、作業終了を4時としています(昼休みは11時から1時まで。日曜日は
森の仕事も工房もお休みです)。


(2)「蚕まつり」とその前夜祭のご案内
 わたしたちIKTTは、これまで「伝統の森」で、9月の満月の日に「蚕
まつり」を行なってきました。ご存知のとおり、わたしたちは、カンボジア
伝統の絹織物を制作しています。そして、その絹織物を販売することで、わ
たしを含め400人以上の研修生たちの生活が成り立っています。いわば、
お蚕さんに「食べさせて」もらっているのです。
 しかし、生糸を取るためには、お蚕さんを繭のまま釜茹でにします。つま
り殺生をすることになります。カンボジアでは多くの人たちが敬虔な仏教徒
です。仏教徒にとって、殺生はしてはならないことのひとつです。わたしが
13年前、カンポットのタコー村で伝統的養蚕を再開しようとしたときも、
村びとのなかから「殺生するのはいや」という声がありました。しかし、わ
たしは、これは無益な殺生ではないのだ、わたしたち自身がそれで生かされ
ているのだ、と村びとたちに説明したのです。
 2003年7月、「伝統の森」で養蚕が始まり、はじめて生糸ができたと
き、わたしはそのことを思い出しました。そして、わたしたちがこの地でア
ンコールの神がみに生かされていることに感謝し、さらにはお蚕さんに生か
されていることに感謝して、蚕供養をしようと思い立ちました。古い中国の
資料にも、蚕を祭る儀式があったことが記されています。ベトナムや中国に
は、蚕寺があるそうです。養蚕が盛んだった地域に蚕を祭る習慣があったと
しても不思議ではありません。
 それ以来わたしたちは、9月の満月の日に「蚕まつり」を催すことにしま
した。午前中は、おばあたちが中心となってお蚕さんを供養する儀式を行な
い、IKTTの研修生全員で昼食をとります。食事の準備もみんなで分担し
て行ないます。食事のあとは、青空ディスコで盛り上がるのが定番となりま
した。今年は、9月15日がその満月の日です。
                *
 さらに今年は、その前夜祭として「伝統の森」でファッションショーを開
催します。
 これまでは、カンボジアシルクフォーラムという団体の主催で、シエムリ
アップのグランドホテルを会場に、アンコールシルクフェアが開催されてき
ました。カンボジアシルクフォーラムというのは、カンボジア国内のシルク
に関係する団体(養蚕を支援するNGOから、絹織物を制作販売する会社、
テキスタイルデザイナー、そしてアンティークシルクを販売するショップな
ど)によって設立された、カンボジアシルクのプロモーションを行なう団体
です。そして、シルクフェアのメインイベントともいえるのが、ファッショ
ンショーでした。IKTTも、2回目以降、このファッションショーに参加
してきました。その基本にあるのは「自分たちが織り上げた布を、自分たち
でまとって、ステージに立つ」ということです。自分たちの作っているもの
はこんなにもすばらしいものなのだということを、IKTTのひとりひとり
にも理解してほしいからです。
 しかし、4回まで続いたアンコールシルクフェアのファッションショーも
今年2008年は開催できずにいます。そこで今年は「伝統の森」に簡単な
ステージを作り、IKTT独自に、ファッションショーを開催することにし
ました。また、ファッションショーのプレイベントとして、IKTTの子ど
もたちの勝ち抜きダンスコンテンストも予定しています。この子どもたちの
勝ち抜きダンスコンテストは、子どもたちに思い思いのダンスを披露しても
らい、それを客席からのゲスト審査員とともに審査します。勝ち抜いた優勝
者には、景品を用意する予定です。
 それぞれのイベントの詳細、そしてタイムテーブルなどについては現在調
整中ですが、子どもたちのダンスコンテストの開始を18時、ファッション
ショーを19時半開始(20時終了)くらいを考えています。また、翌朝の
蚕供養については、朝7時くらいにお坊さんの読経が始まることになると思
います。みなさま、「伝統の森」の蚕まつりに、そして「伝統の森」のファ
ッションショーに、ぜひともお越しください。お待ちしております。


(3)伝統の森「蚕まつり」ツアーのご案内
 これまでに多くのエコツアー・スタディツアーを企画されてきた日本エコ
プランニングサービスが、9月に行なわれるIKTTの「蚕まつり」にあわ
せたツアーを企画されました。ツアーの詳細については、以下のサイトをご
覧いただくか、日本エコプランニングサービス(tel:03-5807-1691)にお問
い合わせください。

▼カンボジア IKTT伝統の森「蚕まつり」ツアー
http://www.jeps.co.jp/cambodia/IKTT_08sep.html


(4)『カンボジア絹絣の世界』発売中
 『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』が、NHKブ
ックスから発売になりました。前著『メコンにまかせ』から10年、ようや
くかたちにすることができました。多くの方たちから、続編は出さないのか
とたずねられておりましたから、これでようやく肩の荷がひとつ下ろせたよ
うな気がしております。
 早いもので、IKTTを設立してから12年になります。この『カンボジ
ア絹絣の世界』には、これまでわたしたちが取り組んできたこと、現在のI
KTTの状況、そして「伝統の森」再生計画が目指していることなどについ
て、かなりくわしく書いたつもりです。染め織りに関する描写もできるだけ
書き込みました。巻末には「IKTTの絣布ができるまで」と題し、桑の苗
を育て、養蚕をし、生糸を引き、それを括り、染め、織り上げるまでの工程
を、写真とともに簡潔に説明したページもつきました。本文中には「伝統の
森」の位置をプロットした「シエムリアップ周辺図」と、現状でいちばん詳
細な「伝統の森」の見取図も掲載されています。
 前著『メコンにまかせ』は、わたしがタイを訪れ、黄金の生糸に出会い、
そして東北タイの村びとたちと試行錯誤しながら染め織りを手がけてきたこ
とと、カンボジアユネスコのコンサルタントとして「カンボジア絹織物の現
状調査」を担当したことで、カンボジアの伝統織物が置かれた現状を知り、
その結果としてタコー村で伝統的養蚕の復活プロジェクトに取り組み、そし
てIKTTを設立するに至るまでのことが記されています。いわば、IKT
T前史とでもいえる内容でした。
 今回の『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』が出版
されたことで、IKTTは何をやっているところなのか、そして森本はこれ
から何をしようとしているのか、というみなさまの疑問に対する、ひとつの
回答とさせていただけるのではないかと思っております。
 お近くの書店でお求めになり、お読みいただければ、幸いです。
□ 書 名:『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』
□ 著 者:森本喜久男
□ 発行元:NHK出版(NHKブックス1102)
□ 価 格:970円(+税)
□ ISBN:978−4−14−091102−0 C1339


(5)"FRONTLINE/WORLD"ウェブサイト公開のご案内
アメリカの公共テレビ局PBSの「FRONTLINE/WORLD」というドキュメンタリー
番組で私たちクメール伝統織物研究所が紹介されました。「Cambodia: The
Silk Grandmothers 」というタイトルでまとめられています(英語版の番組
ですが、わたしはインタビューに日本語で答えています)。この番組は、ウ
ェブサイト上でも公開されています(約13分)。以下のURLから、ご覧に
なれるはずです(再生にはQuicktimeあるいはRealplayerが必要とのこと)
▼「Cambodia: The Silk Grandmothers」
http://www.pbs.org/frontlineworld/rough/2007/06/cambodia_the_si.html


____________________ I N F O R M A T I O N _________________________

★ショップ&ギャラリーの営業時間のご案内★
シエムリアップのIKTTのショップ&ギャラリーの営業時間は朝8時から
夕方6時まで(年中無休)です。工房の見学を希望されるかたは、平日の朝
9時から夕方5時まで(正午から午後2時までは昼休み、日曜日はお休み)
の間にお越しください(できるだけ事前にご予約をお願いします)。

★★シエムリアップIKTTまでの歩き方★★
オールドマーケット(プサー・チャー)の南側にあるタ・プローム・ホテル
の玄関前に立ち、右斜め前の方向に、道路を挟んで流れるトンレサップ川に
沿って進みます。川岸には遊歩道が整備がされています。道なりに(つまり
川に沿って)歩くこと5〜6分で、右手前方に「クメール伝統織物研究所」
と日本語と英語で書かれた看板が見えてきます。ここがIKTTです。(左
側にクロコダイルファームの看板が見えたら行き過ぎてしまいました。お戻
りください)

★★★「伝統の森」ショップの営業時間のご案内★★★
新たに、「伝統の森」に、ショップがオープンしました。森のショップの営
業時間は、朝7時から夕方4時までです。年中無休ですが、お越しになる場
合は、できるだけ事前にご連絡をお願いいたします。(アクセス方法につい
ては、以下の「伝統の森」への道のりをご覧ください)

★★★★ピアックスナエン・「伝統の森」への道のり★★★★
「伝統の森」は、シエムリアップの町から北へ約30キロ、車で約1時間の
ところにあります。アンコールワットを右に見て進み、アンコールトムの南
大門をくぐり四面仏の尊顔が微笑むバイヨン寺院を通り越し、さらに北へ。
プリアカン寺院の門前を過ぎて道路が大きく右にカーブした先に、左に折れ
る一本道が現われます。この道を約10キロ、途中何度か川を渡り、左手の
木立の間にお寺が見えたらすぐ先の道を右へ。曲がり角に設置してあるIK
TTとMORIMOTOの名前の入った緑色の看板を確認してください。こ
こから約4キロ、ふたたび川を渡り、しばらく行くと右手に「伝統の森」の
入口が現われます。
※2008年7月現在、シエムリアップの町から「伝統の森」までタクシー
で往復40〜50ドルが相場です(郊外に向かうタクシー料金は、シエムリ
アップ基点で請求されるので片道でも料金は同じです)。なお、シエムリア
ップからアンコール遺跡群へ向かう途中で立ち寄る通行証のチェックゲート
で「ピアックスナエンの養蚕の村へ行く」と説明すれば、通行証を購入しな
くてもゲートを通過できるはずです。
※『カンボジア絹絣の世界』p.116 の「シエムリアップ周辺図」にも、「伝
統の森」の位置がプロットされております。こちらも参考にしてください。

2008年8月18日
クメール伝統織物研究所 森本喜久男

●発行
IKTT (INSTITUTE FOR KHMER TRADITIONAL TEXTILES)
No. 472, Viheachen Village, Svaydongkum Commune,
(Road to lake, near the crocodile farm)
P.O. Box 9349, Siem Reap Angkor, Kingdom of Cambodia

※当メールに掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。
※このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
 を利用して発行されております。【 http://www.mag2.com/ 】
mag2 ID: 0000070073
Copyright (c) 2008 IKTT All rights reserved.

◎メコンにまかせ
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更新日時 : 2008年8月18日 07:50

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