IKTT
IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

【メコンにまかせ】IKTT [クメール伝統織物研究所]Vol.123

2008/08/31___________________________________________________Vol.123 IKTT [INSTITUTE FOR KHMER TRADITIONAL TEXTILES] ______________________________________ http://iktt.esprit-libre.org/

みなさま、IKTT(クメール伝統織物研究所)の森本喜久男です。

◎わたしの「手の記憶」
 ひさしぶりに、わたしにとっての京都時代の手の記憶といえる、ローケツ
染めの布を描いた。
 当時、キモノにローケツ染めの絵柄を描くことが主な仕事だった。そして
私と布との接点は、絵が描きたくなるような質感のある布だった。いまIK
TTで、そんな質感のある、ほんとうに手作りの布が作れるようになった。
 IKTTで熟練の織り手たちと一緒に仕事をしながら、自分自身で無性に
染めたくなるときがある。おおくは、それは年に一度だけ。だから、私のロ
ーケツの布は年に数枚しかできない、でいる。ふだんは、現場のみんなの仕
事を見る忙しさに追われているからなのだが。
 描く図柄は決まっている。それは樹木の枝、なぜかこの図柄が気に入って
いる。何度描いても飽きずに、またその新しいバージョンが生まれてくる。
最近、気がついたのだが、その図柄に似たものが、バイヨン寺院の壁画にあ
る。
 それは、生命の木かもしれない。いくつかの枝葉が重なりながら、天を目
指すように伸びている。それはまた、IKTTのみんなの生きる姿でもある
のかもしれない。一枚一枚の葉っぱが、一人ひとりの、熟練の織り手や研修
生といえるような。ときには絡まりながら、そして揺れながら、天をめざす
枝葉たち。
 いままでの布は、すべてIKTTのショップで完売した。だから一枚も手
元にはない。ここ数週間、ひさしぶりに忙しさの合間を縫って、5枚も描き
上げた。長さ2.5 メートルの大きいものも2枚。それらは、実はこの9月の
蚕まつりの前夜祭のファッションショーの一コマで、布としてまとわれ紹介
される予定である。
 このローケツ染めの仕事、できればIKTTのお絵描き組の何人かに伝え
ていきたいと思っている。彼女たちは、筆を持って数年が経つ。すでにその
資質は備わっている。わたしが、京都という伝統の染色の世界で、神業のよ
うな親方から学んだ、その手の記憶を、このカンボジアの地で若い世代に伝
えていくことができれば、それは本望である。
 彼女たちの何人かは、これまでわたしのローケツ染めの手伝いをしてきた
ことで、すでにその手順は理解している。柄は、彼女たちの得意とする柄で
いい。それを作品にすることができれば。化学染料を一切使わず、自然の染
料だけで描かれるローケツ染めの世界。それは、すでにインドやインドネシ
アでも消えてしまった世界でもある。


(1)「蚕まつり」とその前夜祭のタイムテーブルについて
 「伝統の森」の「蚕まつり」も、まもなくとなりました。前夜祭でのいく
つかの「お楽しみ」も併せて準備しています。
 タイムテーブルは、これまでご案内してきたものから、大きく変わるもの
ではありませんが、15日の蚕供養の読経開始は朝6時になります。また、
その後のイベントのひとつとして、村の楽団を招くことにしました。みんな
で食事の準備をしつつ、彼らの演奏と踊りで盛り上がろうと思います。

【前夜祭】
9月14日(日) 18時開始(20時終了予定)
 ・子どもたちの勝ち抜きダンスコンテスト
 ・ファッションショー
 ・その他
【蚕まつり】
9月15日(月) 早朝より
 ・蚕供養(僧侶による読経) 6時開始
 ・村の楽団の演奏 8時ごろから
 ・食事準備〜共食
 ・青空ディスコ など(正午すぎには終了予定)


(2)「蚕まつり」とは
 わたしたちIKTTは、これまで「伝統の森」で、9月の満月の日に「蚕
まつり」を行なってきました。ご存知のとおり、わたしたちは、カンボジア
伝統の絹織物を制作しています。そして、その絹織物を販売することで、わ
たしを含め400人以上の研修生たちの生活が成り立っています。いわば、
お蚕さんに「食べさせて」もらっているのです。
 しかし、生糸を取るためには、お蚕さんを繭のまま釜茹でにします。つま
り殺生をすることになります。カンボジアでは多くの人たちが敬虔な仏教徒
です。仏教徒にとって、殺生はしてはならないことのひとつです。わたしが
13年前、カンポットのタコー村で伝統的養蚕を再開しようとしたときも、
村びとのなかから「殺生するのはいや」という声がありました。しかし、わ
たしは、これは無益な殺生ではないのだ、わたしたち自身がそれで生かされ
ているのだ、と村びとたちに説明したのです。
 2003年7月、「伝統の森」で養蚕が始まり、はじめて生糸ができたと
き、わたしはそのことを思い出しました。そして、わたしたちがこの地でア
ンコールの神がみに生かされていることに感謝し、さらにはお蚕さんに生か
されていることに感謝して、蚕供養をしようと思い立ちました。古い中国の
資料にも、蚕を祭る儀式があったことが記されています。ベトナムや中国に
は、蚕寺があるそうです。養蚕が盛んだった地域に蚕を祭る習慣があったと
しても不思議ではありません。
 それ以来わたしたちは、9月の満月の日に「蚕まつり」を催すことにしま
した。午前中は、おばあたちが中心となってお蚕さんを供養する儀式を行な
い、IKTTの研修生全員で昼食をとります。食事の準備もみんなで分担し
て行ないます。食事のあとは、青空ディスコで盛り上がるのが定番となりま
した。今年は、9月15日がその満月の日です。
 さらに今年は、その前夜祭として「伝統の森」でファッションショーを開
催します。
 これまでは、カンボジアシルクフォーラムという団体の主催で、シエムリ
アップのグランドホテルを会場に、アンコールシルクフェアが開催されてき
ました。カンボジアシルクフォーラムというのは、カンボジア国内のシルク
に関係する団体(養蚕を支援するNGOから、絹織物を制作販売する会社、
テキスタイルデザイナー、そしてアンティークシルクを販売するショップな
ど)によって設立された、カンボジアシルクのプロモーションを行なう団体
です。そして、シルクフェアのメインイベントともいえるのが、ファッショ
ンショーでした。IKTTも、2回目以降、このファッションショーに参加
してきました。その基本にあるのは「自分たちが織り上げた布を、自分たち
でまとって、ステージに立つ」ということです。自分たちの作っているもの
はこんなにもすばらしいものなのだということを、IKTTのひとりひとり
にも理解してほしいからです。
 しかし、4回まで続いたアンコールシルクフェアのファッションショーも
今年2008年は開催できずにいます。そこで今年は「伝統の森」に簡単な
ステージを作り、IKTT独自に、ファッションショーを開催することにし
たのです。
 また、ファッションショーのプレイベントとして、IKTTの子どもたち
の勝ち抜きダンスコンテンストも予定しています。この子どもたちの勝ち抜
きダンスコンテストは、子どもたちに思い思いのダンスを披露してもらい、
それを客席からのゲスト審査員とともに審査します。勝ち抜いた優勝者には
景品を用意する予定です。
 みなさま、「伝統の森」の蚕まつりに、そして「伝統の森」のファッショ
ンショーに、ぜひともお越しください。お待ちしております。


(3)伝統の森「蚕まつり」ツアーのご案内
 これまでに多くのエコツアー・スタディツアーを企画されてきた日本エコ
プランニングサービスが、9月に行なわれるIKTTの「蚕まつり」にあわ
せたツアーを企画されました。ツアーの詳細については、以下のサイトをご
覧いただくか、日本エコプランニングサービス(tel:03-5807-1691)にお問
い合わせください。

▼カンボジア IKTT伝統の森「蚕まつり」ツアー
http://www.jeps.co.jp/cambodia/IKTT_08sep.html


(4)「伝統の森」にショップがオープンしました
 新たに、「伝統の森」に、ショップがオープンしました(シエムリアップ
のショップ&ギャラリーが移転したわけではないので「伝統の森」にまで足
をのばす時間のない方は、これまでどおりシェムリアップのショップへお越
しください)。
 森のショップの営業時間は朝7時から夕方4時までです。お越しになる場
合は、できるだけ事前にご連絡をお願いいたします。
 なお、「伝統の森」では農作業が中心となるため、全体の作業開始が朝7
時、作業終了を4時としています(昼休みは11時から1時まで。日曜日は
森の仕事も工房もお休みです)。
 なお、現在のところ、「伝統の森」のショップではクレジットカードはご
利用になれませんのであらかじめご了承ください(シエムリアップのショッ
プでは、クレジットカードもご利用いただけます)。


(5)『カンボジア絹絣の世界』発売中
 『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』が、NHKブ
ックスから発売になりました。前著『メコンにまかせ』から10年、ようや
くかたちにすることができました。多くの方たちから、続編は出さないのか
とたずねられておりましたから、これでようやく肩の荷がひとつ下ろせたよ
うな気がしております。
 早いもので、IKTTを設立してから12年になります。この『カンボジ
ア絹絣の世界』には、これまでわたしたちが取り組んできたこと、現在のI
KTTの状況、そして「伝統の森」再生計画が目指していることなどについ
て、かなりくわしく書いたつもりです。染め織りに関する描写もできるだけ
書き込みました。巻末には「IKTTの絣布ができるまで」と題し、桑の苗
を育て、養蚕をし、生糸を引き、それを括り、染め、織り上げるまでの工程
を、写真とともに簡潔に説明したページもつきました。本文中には「伝統の
森」の位置をプロットした「シエムリアップ周辺図」と、現状でいちばん詳
細な「伝統の森」の見取図も掲載されています。
 前著『メコンにまかせ』は、わたしがタイを訪れ、黄金の生糸に出会い、
そして東北タイの村びとたちと試行錯誤しながら染め織りを手がけてきたこ
とと、カンボジアユネスコのコンサルタントとして「カンボジア絹織物の現
状調査」を担当したことで、カンボジアの伝統織物が置かれた現状を知り、
その結果としてタコー村で伝統的養蚕の復活プロジェクトに取り組み、そし
てIKTTを設立するに至るまでのことが記されています。いわば、IKT
T前史とでもいえる内容でした。
 今回の『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』が出版
されたことで、IKTTは何をやっているところなのか、そして森本はこれ
から何をしようとしているのか、というみなさまの疑問に対する、ひとつの
回答とさせていただけるのではないかと思っております。
 お近くの書店でお求めになり、お読みいただければ、幸いです。
□ 書 名:『カンボジア絹絣の世界〜アンコールの森によみがえる村』
□ 著 者:森本喜久男
□ 発行元:NHK出版(NHKブックス1102)
□ 価 格:970円(+税)
□ ISBN:978−4−14−091102−0 C1339


(6)"FRONTLINE/WORLD"ウェブサイト公開のご案内
アメリカの公共テレビ局PBSの「FRONTLINE/WORLD」というドキュメンタリー
番組で私たちクメール伝統織物研究所が紹介されました。「Cambodia: The
Silk Grandmothers 」というタイトルでまとめられています(英語版の番組
ですが、わたしはインタビューに日本語で答えています)。この番組は、ウ
ェブサイト上でも公開されています(約13分)。以下のURLから、ご覧に
なれるはずです(再生にはQuicktimeあるいはRealplayerが必要とのこと)
▼「Cambodia: The Silk Grandmothers」
http://www.pbs.org/frontlineworld/rough/2007/06/cambodia_the_si.html


____________________ I N F O R M A T I O N _________________________

★ショップ&ギャラリーの営業時間のご案内★
シエムリアップのIKTTのショップ&ギャラリーの営業時間は朝8時から
夕方6時まで(年中無休)です。工房の見学を希望されるかたは、平日の朝
9時から夕方5時まで(正午から午後2時までは昼休み、日曜日はお休み)
の間にお越しください(できるだけ事前にご予約をお願いします)。

★★シエムリアップIKTTまでの歩き方★★
オールドマーケット(プサー・チャー)の南側にあるタ・プローム・ホテル
の玄関前に立ち、右斜め前の方向に、道路を挟んで流れるトンレサップ川に
沿って進みます。川岸には遊歩道が整備がされています。道なりに(つまり
川に沿って)歩くこと5〜6分で、右手前方に「クメール伝統織物研究所」
と日本語と英語で書かれた看板が見えてきます。ここがIKTTです。(左
側にクロコダイルファームの看板が見えたら行き過ぎてしまいました。お戻
りください)

★★★「伝統の森」ショップの営業時間のご案内★★★
新たに、「伝統の森」に、ショップがオープンしました。森のショップの営
業時間は、朝7時から夕方4時までです。年中無休ですが、お越しになる場
合は、できるだけ事前にご連絡をお願いいたします(アクセス方法について
は、以下の「伝統の森」への道のりをご覧ください)。

★★★★ピアックスナエン・「伝統の森」への道のり★★★★
「伝統の森」は、シエムリアップの町から北へ約30キロ、車で約1時間の
ところにあります。アンコールワットを右に見て進み、アンコールトムの南
大門をくぐり四面仏の尊顔が微笑むバイヨン寺院を通り越し、さらに北へ。
プリアカン寺院の門前を過ぎて道路が大きく右にカーブした先に、左に折れ
る一本道が現われます。この道を約10キロ、途中何度か川を渡り、左手の
木立の間にお寺が見えたらすぐ先の道を右へ。曲がり角に設置してあるIK
TTとMORIMOTOの名前の入った緑色の看板を確認してください。こ
こから約4キロ、ふたたび川を渡り、しばらく行くと右手に「伝統の森」の
入口が現われます。
※2008年7月現在、シエムリアップの町から「伝統の森」までタクシー
で往復40〜50ドルが相場です(郊外に向かうタクシー料金は、シエムリ
アップ基点で請求されるので片道でも料金は同じです)。なお、シエムリア
ップからアンコール遺跡群へ向かう途中で立ち寄る通行証のチェックゲート
で「ピアックスナエンの養蚕の村へ行く」と説明すれば、通行証を購入しな
くてもゲートを通過できるはずです。
※『カンボジア絹絣の世界』p.116 の「シエムリアップ周辺図」にも、「伝
統の森」の位置がプロットされております。こちらも参考にしてください。

2008年8月31日
クメール伝統織物研究所 森本喜久男

●発行
IKTT (INSTITUTE FOR KHMER TRADITIONAL TEXTILES)
No. 472, Viheachen Village, Svaydongkum Commune,
(Road to lake, near the crocodile farm)
P.O. Box 9349, Siem Reap Angkor, Kingdom of Cambodia

※当メールに掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。
※このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
 を利用して発行されております。【 http://www.mag2.com/ 】
mag2 ID: 0000070073
Copyright (c) 2008 IKTT All rights reserved.

◎メコンにまかせ
のバックナンバー・配信停止はこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000070073/index.html
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更新日時 : 2008年8月31日 14:15

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