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IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

一期一会

乾季に入った12月。数日前に、満月だったからか、深夜の月の光が明るい。

わたしの英語版の「バイヨンの月」を読んだドイツ人の女性が、そんな月に輝くバイヨン寺院を見たくて深夜、ガイドを連れてホテルを抜け出した。

しかし、完全に密封され、夜8時以降は地元の人も通行できなくなってしまった最近のアンコールトムでは、残念ながらそんな美しいバイヨン寺院を見る機会も失われてしまった。

しかし、あと数年したら、そんな月夜に輝くバイヨンを見るためのツアーが企画されているかもしれない。やはり、この時期の陽が落ちる寸前の夕日にあたり、黄金色といってもいいようなオレンジ色に輝くバイヨン寺院のトップもきれいだ。でも、それは数分間のドラマ。

もう10年以上前になるが、日本のテレビの現地コーディネーターをさせていただいていたとき、その話をディレクター氏にしたところ、どうしてもそれが撮りたいという話になった。しかし、わずかでも雲がかかっていればそんなきれいな風景は見られることはない。一期一会、自然は生もの。撮影の予定を調整して、数日バイヨンに通ったことがある。

最近、インターネットのブログを見ていて、英語のチェンジとチャンスがアルファベット表記で一文字しか違わないことを改めて知った。この言葉がとても今の時代を言いえて妙な気がした。

一万円を両替に行くと、US100ドルを超えた。これまでにも何度かあったことだが、今回はその規模が大きい。世界が大きく揺れ動いている、それは百年単位で変化していく歴史とでもいうのだろうか、今ちょうどそんな時代にいるような気がする。

織物の歴史を見ていくと、時代とともに変化していくものと、何百年何千年経っても、変化しないものがあるように思う。変化しないものに「美」がある。美しいものは、いつの時代にも美しい。古代エジプトや南米のアステカ、そして中世のヨーロッパやペルシャ。それは、人の美に対する変わらぬ思いのような気がする。

しかしそれは、つねにあらたな美を求める人々の心に支えられた所作の結果でもある。自然の布、それを生み出そうとする美意識。それは、布に対する価値の意識の変化の中での、あらたな挑戦とも言える。そんな時代、チャンス、機会が今、確実に訪れて来ているのかも知れない。

あらためて、一期一会。今は今しかない。今を生きること、そんなことをふと思っている。

更新日時 : 2008年12月23日 02:34

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