祭りを終えて
昨年は、雷と嵐というなかで挙行した前夜祭。さいわい、今年は天気にも恵まれ、雨も前夜祭を終え、皆さんが帰宅の途につかれるまで降らないでいてくれた。
昨年よりも、さらにバージョンアップしたファッションショー。IKTTの織姫さんたち、みんな綺麗だった。そして今年は、パムアンと呼ばれる玉虫に輝く無地の布を贅沢(?)に多用した。そのボリュームと重厚感が、なんといっても今年のメイン。自然の染料と、カンボジアの本当に手作りの生糸の持つ風格が、それをまとった彼女たち、いや今年は男衆もまとったのですが、輝いておりました。
今回使用したパムアンは、ひとつは黄金色に輝くプロフーの黄色。そしてプロフーの鉄媒染による深い緑を緯糸に配し、経糸にはラックの赤。この組み合わせは、カンボジアでは伝統的な色、アヒルの首の色にたとえてコーティヤと呼ばれているもの。そして、ラックカイガラムシから生み出される赤と紫。それぞれが、照明の光に当たり、輝いていた。
カンボジアの絣の布も含め、パムアンの布は、身にまとわれるて、その動きのなかで、ほんとうにその布の美しさが表現される。ファッションショーでの布たちはその極み、という気がした。とても贅沢なひとときかもしれない。
もうひとつ。昨年に続いて、今年もわたしのローケツ染めの布も出さしていただいた。布は、もちろんIKTTの織り手たちによって織られた無地の布。そこにローケツ染めを施す。これまでの定番の、椰子の実の茶色とラックの赤との組み合わせから、今年は、新たに進化することができた。京都での手書き友禅の見習い時代から数えれば、はや40年が経つ染め職人としての自覚に、なぜか目覚めてしまった。その結果が、プロフーの鮮やかな黄色とラックの赤、そしてとどめの藍。「伝統の森」で採れた藍。それを泥藍にして、寝かして2年。ほんとうに自然の三原色。その美しさは、ファッションショーをご覧になった方から「本当に自然の染料でこんな鮮やかな色が出るのですか」と質問を受けるほどだった。
「ミロ」という、在シエムリアップの日本人の方々とカンボジアの女性ボーカルのバンドが、今年は特別出演。いや、ほんとうに盛り上がりました。ありがとうございます。感謝。昨日も、その様子を撮ったビデオを森のみんなと見ながら、子どもたちのダンシングとともに、歓声が再び上がっておりました。また、来年の「蚕まつり」にも是非。是非ですね、出演お願い申し上げます。
そして、今年の「蚕まつり」には、昨年の50数名を上回る70名を超える日本の方々も来ていただきました。旅行の予定を、この「蚕まつり」に合わせておいでいただいた方々も含め、ほんとうにありがとうございました。
ファッションショーで歩くモデル(?)さんたちも、たくさんの方々が来ていただけることで、燃えております。
あわせ、今年の「蚕まつり」での大きな喜びは、周辺の村の人たちがたくさん来てくれたこととともに、アンコールトム郡の行政の方々もお出でいただいたこと。これは、この「蚕まつり」が、地域に根づく第一歩となり始めていることを意味している。そして、いくつかの地元の新聞社やテレビ局の取材も受けるようになった。
だからというわけではないのですが、次なる夢は、この「蚕まつり」が将来シエムリアップを代表するようなお祭りになっていってくれればいいな、というのがあります。古代のカンボジアは蚕の故郷。自然と暮らすカンボジアの人びとの知恵。そして、豊かな自然への感謝の気持ち。そんなことを、この「蚕まつり」が伝えていくことができるようになればと思う。
森本喜久男
更新日時 : 2009年9月14日 07:44