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IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

森の迎賓館

ゲストルームとして3年前にできた、最初の4部屋。そして、一年がかりの4部屋の増築が今年の2月に完成。計8部屋になり、最大で15人の方が宿泊可能になった。昨年の暮れ、ちょうど増築工事中に王族の方が伝統の森に来られて、家族でここに滞在したいと言うお話が突然あり、急遽、部屋のつくりを丁寧に仕上げることになった。そんな経緯もあり、一部には古い家具も入れ、なかなか素敵な内装で、いまでは伝統の森の迎賓館と自称するようになった。泊まっていただいた方には、好評。

基本はB&B。宿泊と朝食。朝食のパンは、とてもおいしい。じつは最近、シエムリアップで横浜のパン屋さんの協力を得て、カンボジアの若い方たちにボスコというパンの学校を始められた日本人のシスターたち。その活動の成果。でも、本当においしい。初めのころに、技術指導で来られていた、横浜のパン屋さんの焼かれたパンを頂いた。その味は、いまでもわたしの舌に残っている。そんなすばらしいパンに一歩近づくようなパンが、カンボジア人のパン職人さんの手で最近でき始めてきている。

そして、朝食の付け合せの野菜は伝統の森の畑でできたもの、もちろん無農薬のオーガニック。甘みがあって、おいしい。出来上がってくる野菜は季節によって違うけれども、切らさずに栽培していけるようになることも、今の伝統の森「野菜グループ」の課題。そして、卵は放し飼いのアヒルの卵。ここしばらくは、アヒルの世代交代で市場から鶏卵を買ってきているが、あと一月ほどでアヒルたちも卵を産み始める。鮮やかな黄身で、癖の無い卵。一度食べれば、間違いなく好きになる。

パンにつけるピーナツバター。これも、メイドイン カンボジア。最近町にでき始めたスーパー、そこで売られている商品のほとんどは輸入品。調味料や石鹸、シャンプーなど多くの加工食品や雑貨品もすべて輸入に頼っているといっても過言ではない。だから、店の中でメイドイン カンボジアを見つけることは至難。そのなかで、混ぜモノなしの、粒入りのシンプルなこのピーナツバターは人気のメニュー。

部屋には小さな台所もあり自炊も可能、ときには長期滞在の方も泊まられることもある。

数ヶ月前には、カナダ人とポルトガル人の若い女性がふたり伝統の森に。そして、ゲストルームを見つけて宿泊を希望。翌日から約一週間、彼女たちはシンプルに自炊をしながら森の木陰でハンモックに揺られ、ときに子どもたちと遊び、楽しそうだった。おもしろかったのは台所にあった日本茶を見つけて、お茶フリーク。もっとあるのか、と聞かれてしまった。やはり、丁寧に作られた濃くのある日本茶のおいしさは別格。大量生産された、有名ブランド紅茶にはない世界といえる。

そんなゲストルームも電気は夕方からの夜間だけ、10時には消灯、そのあとは灯油ランプの世界。電気の灯火にはない、生きもののような炎のやさしさを、わたしも森に住むようになってあらためて、再確認。そして、すすけるちいさなランプのガラスのホヤを掃除しながら、子どものころの風景を思い出した。懐中電灯のようなものも便利だけれど、日常的に使おうとすると電池の消耗と交換の早さが気になる。ソーラパネルで発電しても、夜間に使うためにはバッテリーが必要で、これもまた消耗品、それと似ている。流行りの、発光ダイオートのライトも消費電力が少なくていいのだが、簡単に故障するものが多く、使い捨てライターのような作られかたをしているような気がする。そんな試行錯誤を繰り返し、いまでは昔ながらの灯油ランプに落ち着いた。三日に一度は、油を補給する日々が。

お湯のシャワーは無く、水だけ。お湯のシャワーを提供したいと考えているが、その方法にまだ悩んでいる途中で、ごめんなさい、まだ結論が出ないでいます。太陽熱利用の温水器もゲストルームの宿泊者がフルになったときのことを考えると、その設備はかなりの規模になる。最終的には、牛糞によるバイオガスや水力発電、ソーラパネルによる発電などの、エネルギーの自給も目標においている「伝統の森」建設計画。お湯のシャワーの実現も、その一部となる。全体のハイブリットエネルギーシステムの構築、その多難な課題の達成の途中にある。現状での妥協点を見出しながらの、暫定的な方法でお湯を確保することへの思い切りが、まだつかないでいる。

でも一番いいのは、やはり昔ながらの五右衛門風呂かもしれない。でも、そんな大きな鉄の鍋はないから、ドラム缶かな。カンボジアの人は、いたって簡単に水浴び。お湯につかるなんて習慣はない。でも、悲しいかな日本で生まれ育った身、お湯が恋しくなる。たまに行く日本で何が楽しみかといわれると、お風呂。温かい、お湯に身体を沈めると、それは至福の喜びとも言える。ときに心身ともに疲れたときに、アー、風呂に入りたいと思うことがある。それが、もしかしたら唯一の森での生活の不便かもしれない。だから、いまの夢は、伝統の森に日本風の風呂を、できれば露天風呂がいいな、と暢気なことを考えている。

そんな、伝統の森のゲストハウスに宿泊を希望される方がすこしずつ増えてきた。千客万来とまではいかないが、うれしいこと。主には、大学生のグループの方たちが多い。伝統の森の村は、普通のカンボジアの村。そこで、みんなが家族で生活している。実際に、その現場に来ていただき、自分の目で見、感じていただければと思う。森の迎賓館、ぜひ一度おいでください、お待ちいたしております。


森本喜久男

更新日時 : 2009年9月 2日 07:49

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