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IKTT :(クメール伝統織物研究所)森本喜久男

例年ならば

 例年ならば、乾季のこの時期にも、ときに雨が降ったりする。でも今年は、本当に雨なしのお正月だった。しかし、やっと昨夜になって、雨が降ってくれた。4月は、カンボジアの夏。ここ数週間ほど毎日40度近い気温で、久しぶりにサウナ状態。じっとしていても汗が出てくる。朝、昼、夕方、そして寝る前と、一日に4回も水浴びをする、したくなる、そんな時期である。

 そんなときに、最近のお気に入りは、岐阜を訪れたときに買った赤茶色の防水加工がしてある小ぶりの「うちわ」。むかし子どもの頃、家の台所にあったのと同じ。岐阜ではいまも、細々となのだろうが、そんなうちわを作る職人さんがいる。じつは、この赤茶色の防止加工はラックの樹脂なのである。私たちが、赤色の染めに使うのと同じ、ラックカイガラムシの巣から得られる樹脂が使われている。だからそれを知ったとき、このうちわに不思議な縁を感じたりした。

 そして、このうちわ、わたしがローケツ染めをするときに、ローを溶かすコンロに入った炭に風を送るのに活躍している。小ぶりで、でもそのわりに風が強く丈夫なので重宝している。京都でキモノにローケツ染めを描いていた頃は、電気コンロだったが、今では昔なりの炭を愛用している。パタパタとうちわで一あおぎ、そうするとローの温度も上がり、気持ちよく筆が走る。

 夏バテしていた蚕も、この雨で、少し元気を取り戻してくれるだろうか。そして、久しぶりに降った雨のせいか、緑の木々がきれいに見える。人もそうなんだが、きっと木々も雨のお陰でほっとしているんだろうなと思う。

更新日時 : 2010年4月30日 18:52

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